研究概要 |
今年度は、ショウジョウバエの睡眠覚醒制御の中心的な役割を担うと考えられるドパミンの作用機構の解明を中心に研究を進めて、以下の結果を得た。(1)ドパミンシグナルが過剰で睡眠が短くなっている不眠(fumin)変異株の活動の時系列解析から、ドパミンは活動時間ではなく休息時間を短縮させることで1日あたりの活動量を増加させることがわかっている。そこでドパミン神経細胞の一部のクラスターのみを活性化して解析したところ、同様の結果が得られた(投稿中)。(2)不眠変異株の脳内で、特定のタイプのドパミン受容体のみの発現を減少させたところ、睡眠が増えて正常に近く回復した。そこで、現在、どの部位の受容体が重要なのかを局所的なノックダウンで解析中。(3)共同研究により脳内でドパミン合成量が減少する変異株においても、睡眠が増えて覚醒反応が弱まることも確認した(PNAS108,p834-,2011)。(4)ドパミン神経細胞をクラスター単位で抑制した結果、睡眠覚醒制御に用いられているクラスターと、記憶学習に用いられるクラスターには局在の違いがある可能性を発見した。(5)カルシニューリンを全神経細胞でノッ.クダウンすると睡眠が減少するが、脳内の一部の神経でのノックダウンでも睡眠が減少することを見出した。この部分の神経細胞でドパミン受容体の発現を抑制したところ睡眠が増えた。この結果は、カルシニューリンシグナルがドパミンによる睡眠覚醒制御に関与することを示している(投稿中)。以上の結果と、今後の解析から、睡眠制御に必要なドパミンを作る神経細胞の局在と、睡眠制御に必要なドパミン受容体の局在を明らかにして、細胞・回路レベルでの睡眠制御機構の解明を進めている。
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