研究課題/領域番号 |
22300133
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研究機関 | 財団法人 大阪バイオサイエンス研究所 |
研究代表者 |
裏出 良博 財団法人 大阪バイオサイエンス研究所, 分子行動生物学部門, 研究部長 (10201360)
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研究分担者 |
藤森 功 大阪薬科大学, 薬学部, 講師 (70425453)
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キーワード | 睡眠 / 神経 / SOX5 |
研究概要 |
睡眠中に起きる脳の疲労回復や記憶定着の制御機構は不明である。我々は、睡眠時のマウス脳内の神経細胞において転写因子SOX5のエクソン2の一部が欠損した新規スプライシングアイソフォーム(SOX5t2)の発現が上昇することを発見した。本申請研究では、睡眠時のマウス脳の神経細胞におけるSOX5t2の機能解明と睡眠制御の解明を目的とする。平成23年度は、(1)short hairpin SOX5-GFPを搭載したアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターをマウス前頭前野皮質に両側性に局所注入することにより、局所におけるSOX5遺伝子をノックダウンし、脳波測定により睡眠覚醒量を測定した。その結果、SOX5の局所ノックダウンにより、明期開始直後の1時間において、有意なノンレム睡眠量の増加がみられた。また、周波数解析の結果、SOX5の局所ノックダウンマウスはREM睡眠時における0波のパワー値が低下していた。(2)大脳皮質の、より広範囲な部位でのSOX5遺伝子ノックダウンによる影響を調べるため、2種類のトリプルトランスジェニックマウス(CamK II-tTA/tetO-Cre/flox-SOX5およびNSE-tTA/tetO-Cre/flox-SOX5)を作製した。SOX5遺伝子は胎性致死であったため、Tet-on/offシステムを用いて、成熟マウスの神経細胞のSOX5発現をノックダウンした。(3)マウス神経細胞株であるNeuro-2a細胞にSOX5t2を導入・過剰発現させ、細胞抽出液を調製し、抗SOX5抗体を用いて免疫沈降後、LC/MS/MS法によりSOX5の結合パートナーの同定を進めた。その結果、SOXファミリーに属する転写因子で単離できたのはSOX5のみであった。ゲルシフトアッセイ法によりSOX5t2が、SOX5遺伝子のプロモーター領域に存在するSOX配列に結合できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Neuro2a細胞にSOX5t2導入・過剰発現させSOX5の結合パートナーの同定を行っているが、導入効率が低いため、SOX5以外のSOXファミリーのタンパク質を単離できていない。
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今後の研究の推進方策 |
1.睡眠とSOX5の関連性の解析 2種類のトリプルトランスジェニックマウス(CamK II-tTA/tetO-Cre/flox-SOX5とNSE-tTA/tetO-Cre/flox-SOX5)を用いてマウスの脳波を測定し、SOX5ノックダウンによる睡眠の質と量の変化を調べる。スライス標本を用いた電気生理実験に替え、免疫組織化学染色による神経細胞や脳形態の変化の検討を進める。 2-SOX5t2の結合パートナーの同定と転写活性化能の検討 SOX5t2の結合パートナーをSOXファミリーから単離するため、SOX5t2遺伝子を搭載したAAVベクターを構築し、Neuro-2a細胞への遺伝子導入効率の向上を図り、再度、候補遺伝子の単離・同定を行う。 3.SOX5t2プロモーター領域の同定 SOX5t2のプロモーター領域を段階的に欠失させたプロモーター・ルシフェラーゼレポーター融合遺伝子を持つプラスミドをNeuro-2a細胞に導入し、ルシフェラーゼ活性を測定することによりプロモーター活性を評価する。
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