睡眠中に起きる脳の疲労回復や記憶定着の制御機構は不明である。これまでの研究において、睡眠時のマウス脳内の神経細胞において転写因子SOX5のエクソン2の一部が欠損した新規スプライシングアイソフォーム(SOX5t2)の発現が上昇することを発見した。そして、ヒト神経細胞株SH-SY5Y細胞にSOX5t2を強制発現させると神経突起のspine 形成が誘導されることを見出した。平成25年度は、①大脳皮質の、より広範囲な部位でのSOX5遺伝子ノックダウンによる影響を調べるため、前年度作製したトリプルトランスジェニックマウス(CamKII-tTA /tetO-Cre/flox-SOX5)を用いて、Tet-on/offシステムにより成熟マウスの前脳神経細胞のSOX5発現をノックダウンした。その結果、SOX5のコンディショナルノックアウトマウスでは、大脳皮質のSox5t2 mRNAレベルがコントロール群の約58%に低下し、明期での有意なREM睡眠の減少と行動量の増加がみられた。また、周波数解析の結果、SOX5の局所コンディショナルノックアウトマウスはNREM睡眠時におけるδ波のパワー値の増加と、θ波のパワー値の低下がみられた。②新生仔から12週齢までのマウスの大脳皮質でのSOX5t2 mRNA発現量を経時的に調べたところ、P0付近と5週齢付近にmRNA発現量のピークがみられ、SOX5t2 mRNA発現が二相性を示すことを確認した。
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