研究課題
長期記憶は、記憶内容が海馬に入力された後、しばらく時間を経てから、側頭葉新皮質内に固定され、安定した記憶痕跡が形成されると考えられている。しかし、その記憶痕跡がどのようにして形成されるのか、また、この記憶痕跡が記憶の想起においてどのような役割を果たすのかについては、ほとんど解明されていない。この研究は、ヒト側頭葉内における長期記憶痕跡の形成機構、および、その記憶痕跡の記憶想起メカニズムに対する役割を解明することを目的とする。AとBという組み合わせをトレーニングにより憶えたのち、AをみてBを想起する、という対連合記憶課題を用いた。3テスラのMRIスキャンを使用し、顔と建物の2種類の視覚刺激それぞれについて、2カ月以上前のトレーニングにより形成された古い記憶跡と、30分程度前に形成された新しい記憶の想起に関連する脳活動を比較した。その結果、顔と建物に共通の記憶痕跡が外側側頭葉の前部にあり、顔と建物それぞれ特異的な記憶痕跡が外側側頭葉の後部にあることが分かった。さらに、1)顔や建物を処理する視覚野、2)海馬、3)外側側頭葉後部、4)外側側頭葉前部の4領域について、顔、建物それぞれについて領域間の相互作用をPPI法で解析すると、顔と建物どちらも、記憶入力時には1から2へ、記憶固定時には2から3へ、記憶想起時には3から4へという神経回路の存在が示された。これらの結果により、記憶痕跡のない新しい視覚情報はまず海馬に入力され、海馬は外側側頭葉の後部へと記憶を固定し、固定された記憶が想起される際は、外側側頭葉の後部から前部へと情報が統合されて想起に至ることが示唆された。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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