研究概要 |
本年度は4編の英文原著論文を発表した(印刷中を含む)。主要な2論文について内容を紹介する。 (1)私の研究室では、皮膚の表皮に存在する自由神経終末を選択的に刺激して痛覚刺激とする「表皮内電気刺激(Intraepidermal stimulation (IES)電極」を独自に開発している。今回は、IES電極が本当に痛覚を選択刺激しているかどうかを確認するために、皮膚に局所麻酔剤であるリドカインテープを貼り、その効果を確かめた。すると、触覚刺激に対しては正常な反応が見られたのに比し、IES刺激による痛覚刺激に対しては、自覚的にも痛みは全く感じず、痛覚に特異的な誘発脳波も全く記録されなかった。この結果は、IES電極が痛覚受容体を選択的に刺激している事を明確に示したものである(Otsuru N, Kakigi R et al : J Pain, 11 (7) : 621-627, 2010). (2)以前より、ニコチン(喫煙)が痛覚を抑制する可能性が示唆されていたが、ヒトを対象とした研究は十分では無かった。私達は、喫煙者に12時間の禁煙をさせた後に、痛み刺激を与え、喫煙前、喫煙後の、自覚的な痛み程度(VAS)、痛覚関連誘発脳波、血中ニコチン濃度を計測した。すると、ニコチン濃度の上昇に伴って、有意にVASの低下と脳波反応の低下が見られた。この結果は、ニコチンが痛覚を有意に抑制する事を示す所見であった(Miyazaki T, Kakigi R et al : Brain Res, 1313 : 185-192, 2010)。
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