私たちは、これまでの研究で、麻酔下の動物において視覚的に提示された物体像は下側頭葉視覚連合野ITにコラムの組み合わせとして表現されることを明らかにした。さらに、提示した物体像を単純にすると、活動していたカラムの一部が消失することから、ITのそれぞれのカラムは物体像に含まれる図形特徴を表していて、物体像はこのような図形特徴カラムの組み合わせとして表現されることが示唆された。本プロジェクトでは、覚醒下の動物が物体像を認識する過程で、このような図形特徴の組み合わせによる物体像の表現はどのような役割を担っているかに取り組んでいる。その第一ステップとして、本年度は、複数のカラムの活動を覚醒動物から記録することを可能にする多電極アレイの技術を確立した。 ITは前部(TE)と後部(TEO)に分けられる。当初、処理の段階としては一番先のTEへのインプラントを試みたが、TEの周辺の海綿骨は大変柔らく、電極アレイを安定に維持することが困難であった。この問題を解決するために、骨の再生を促す技術の開発を進めている。この課題については、現在も検討を進めている。 一方、後部TEOは海綿骨を露出することなく電極アレイを安定にインプラントすることに成功し、物体像に対して引き起こされるカラムのパターンを行動動物から記録することに成功した。麻酔下の動物の研究との関連性を明らかにするために、同一動物の物体像に対する物体像に対する反応を覚醒下と麻酔下で比較する研究を行った。 また、別の動物において物体像を認識するタスクのデザインとでトレーニングが完了した。
|