社会における根本的な行動の1つである(お金などの)リソースの他者との分配個人差は社会の在り方や社会制度に大きな影響を及ぼす。したがってその神経機構の解明は極めて重要である。本研究では、お金などのリソースの他者との分配における個人差が、直感的で早いボトムアップな脳内プロセスと熟考に基づくトップダウンな脳内プロセスのバランスで決まるという仮説を心理学的手法、計算モデル、リアルタイム脳活動計測を融合する手法で、被験者の脳活動から将来行動を予測出来るレベルで仮説を検証する。 初年度にあたる平成22年度は、提案書に記述した記憶負荷を課す最終提案ゲームを予め分類したprosocialの被験者とindividualistの被験者に行ってもらい、記憶負荷の有無が両グループの行動に与える影響を調べた。その結果、prosocialで記憶負荷がある方が不公平な提案に対する拒否率が上がるのに対し、individualistでは記憶負荷がある方が不公平な提案に対する拒否率が下がる。このデータは、prosoicial、individualistという分類が認知機能とはある程度独立した直観的な反応であることを示唆する。さらに機能的MRIの計測によりこの行動差に側坐核と扁桃体が関連した。現在この発見に関して論文を投稿する準備を進めている。また、直観的な行動を細かく分析するために本年度はMRI装置の中でも使用できる眼球運動計測装置の導入、システムのセットアップを行った。平成23度以降、被験者の行動、脳活動分析に本格的に利用する。
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