研究課題/領域番号 |
22300141
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
久和 茂 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (30177943)
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研究分担者 |
山田 靖子 国立感染症研究所, 動物管理室, 室長 (10132846)
酒井 宏治 国立感染症研究所, ウイルス第3部, 研究員 (70515535)
池 郁生 理化学研究所, バイオリソースセンター, 研究員 (40183157)
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キーワード | マウスノロウイルス / 感染症 / マウス / 実験動物学 / 微生物コントロール / 疫学調査 |
研究概要 |
本年度の研究では、(1)実験動物及び野生マウスにおけるMNV疫学的調査、(2)MNV診断系の確立、(3)マウスにおけるMNV感染症モデルの解析、(4)MNVの動物実験への影響に関する検討、および(5)MNVの弱酸性水による不活化に関する検討を実施した。 (1)4つの動物実験施設150検体から35株のMNVを分離した。これら分離株において、既知の分離株と系統学的に大きく異なる株は認められなかった。ELISAを用いた血清抗体検査では、51.9%(152/293)で抗体陽性であった。これとは別に、約1000検体のマウス血清について、ELISA法および間接蛍光抗体(FA)法を用いてMNVの抗体調査を実施した。(2)MNVウイルス遺伝子の検出系としてnested RT-PCR法ならびに糞便及び感染細胞からRNAを抽出せずダイレクトにRT-PCRを行うdirect RT-PCR法を構築した。血清学的診断系として、間接EHSA法、FA法、ウイルス中和試験法、陽性血清としてマウス及びモルモット高度免疫血清、動物感染実験で得られた感染血清を作成した。(3)経口接種、腹腔内接種によるBALB/cマウスへの高力価ウイルス(S7株、10^6PFU/head)の感染実験では、発症は認められず、抗体陽転後にも関わらず、実験期間内(2ヶ月)の持続感染、同居感染が認められた。また、C57BL/6Jおよび同系統を遺伝的背景とするIFN-γ欠損マウスにおいても同様の不顕性感染を示した。これらのことは、動物実験施設内でMNV浸潤の要因と考えられ、他の分離株、他系統のマウスにおける更なる詳細な検討が必要である。(4)DSSを用いた大腸炎モデルに対するMNV感染の影響を検討した結果、MNV感染はDSS大腸炎を軽減する傾向が認められた。(5)RAW264.7細胞を用いたプラックアッセイにより、マウスノロウイルス(MNV,S7株)に対する弱酸性水の効果について検討した。MNV(1vol.)と弱酸性水(9vol.)を混和し、一定時間静置後にウイルス力価を測定したところ、30秒、1分では力価が約10^4低下し、5分では検出限界以下であった。弱酸性水は飲水としても利用可能なことから、弱酸性水を飲水として与えることでマウスに感染したMNVを除去できるかを今後検討する。
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