研究課題/領域番号 |
22300144
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大野 みずき 九州大学, 医学研究院, 助教 (70380524)
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研究分担者 |
續 輝久 九州大学, 医学研究院, 教授 (40155429)
中津 可道 九州大学, 医学研究院, 准教授 (00207820)
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キーワード | DNA修復 / ゲノム変異 / 遺伝子改変マウス / 継世代影響 / DNA損傷 |
研究概要 |
該当年度は次世代以降に伝わるゲノム変異の発生様態に対する酸化的DNA損傷とその修復機構の影響を解析する為に、グアニンの酸化体である8-オキソグアニンに注目し、その修復に関与する遺伝子群の欠損マウス家系を作成/維持し先天性の変異表現型の解析とゲノム変異の解析を行った。Ogg1/Mth1/MutyhトリプルKOマウスの家系では水頭症、二分脊椎、小眼球症、白班を持つ個体が高頻度に生まれ、野生型との交配を初めとする遺伝的解析により水頭症と白班は常染色体優性遺伝形式で遺伝することを明らかにした。さらに変異解析の為にアレイCGHを含む各種ゲノム解析を行ったところ、トリプルKOマウスの家系内で発生し、遺伝的に受け継がれたと考えられる変異を複数検出した。このことは活性酸素によりDNAが酸化されて生じる8-オキソグアニンは継世代変異の原因となる可能性を強く示唆しており、その修復経路の破綻によって生殖細胞中でのゲノムの変異頻度を上昇させていると考えられた。従って本研究課題の主要な目的「各種DNA修復機構次損マウスを用いた生殖細胞系列で遺伝性変異を高頻度に誘発するマウスモデル系の樹立」を達成したと言える。また、昨年度はゲノム中に蓄積した8・オキソグアニンが減数分裂期の相同染色体組換えの頻度を上昇させることを見出していたが、ヌクレオチドプール中から取り込まれた8-オキソグアニンもまた相同染色体組換えの頻度を上昇させることを明らかにした。8-オキソグアニンの蓄積および取り込みによるDNA鎖切断の誘発、Rad51の免疫染色性の上昇より相同染色体組換え経路が誘導されたと考えられた。以上の結果は酸化的DNA損傷とその修復機構は直接生殖細胞におけるゲノム変異の頻度や種類に影響を与えていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の主要な目的のひとつ「各種DNA修復機構欠損マウスを用いた生殖細胞系列で遺伝性変異を高頻度に誘発するマウスモデル系の樹立」を達成した。それらのマウス家系を用いて生殖細胞中で生じた遺伝的変異の検出を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
野生型マウスを用いて生殖細胞系列における核種DNA修復遺伝子の発現状態を解析する。またこれまでに確立した各種DNA修復欠損マウス家系を用いて、生殖細胞形成過程の各段階でのDNA損傷の検出、細胞応答の解析、ゲノム変異の検出を行い、配偶子形成過程での酸化的DNA損傷とその修復機構の役割を明らかにする。また、人為的にDNA損傷を誘発させる系を用いて、欠損させた遺伝子の生殖細胞での役割を解析し、継世代変異の誘発および抑制の分子機構を解析する。たとえば細胞内で8-oxoGを発生させる効果があることが確認されている酸化剤の投与や、低線量X線照射を照射することで全身性に酸化ストレス亢進状態を誘発し、その影響を検証する。
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