研究課題
これまでの3年間で、動物における行動多様性の遺伝的基盤を理解することを目的として、野生由来系統を用いた行動遺伝学を進めてきた。日本産野生マウス由来系統であるMSMと代表的な実験用系統であるC57BL/6 (B6)の間でみられる様々な行動形質の系統差に関して、両系統から作出されたコンソミック系統を用いた遺伝学的解析を行った。その結果、オープンフィールド行動、社会行動、ホームケージ活動性などについて関与する遺伝子座を複数の染色体上にマッピングしてきた。これらの遺伝子座について、原因となる遺伝子を同定する目的で、サブコンソミック系統を樹立して更に高精度の遺伝子座マッピングを進めてきた。その結果、ホームケージ内での活動性に関して、6番染色体の狭い領域に、最低でも4つの活動性に関わる遺伝子が存在することを示した。その領域に存在する3つの候補遺伝子について研究を進め、そのうちの一つの遺伝子では、脳において発現量の系統差が検出され、この遺伝子にはアミノ酸の置換をもたらす多型は存在しないため、この一つの候補遺伝子の発現量の違いが活動量の違いをもたらしている可能性が示された。現在、その機能解析を進めることで活動量との関連を調べているところである。また、不安様行動について、17番染色体上に候補遺伝子をマッピングし、サブコンソミック系統を用いた解析から、原因遺伝子を絞り込み、一つの候補遺伝子に関して遺伝子発現量の系統差を見出した。この遺伝子に関しても、タンパク質翻訳領域には多型はないため、その遺伝子の発現量が不安様行動に関連していると考えられる。現在、その機能解析を進め、不安様行動との関連を調べているところである。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 3件)
Psychopharmacology
巻: 224 ページ: 155-166
DOI: 10.1007/s00213-012-2654-8.
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