研究課題
本研究の目的は、アルツハイマー病の遺伝子改変モデルマウスを用いて、フッ素MR画像診断法を用いたアミロイドイメージング法を開発することである。昨年度までに、クルクミンを基本骨格とするフッ素MR画像診断候補薬であるShiga-Y化合物を新規合成し、それらがベータアミロイドペプチド(Aβ)凝集体のみならず毒性の強いAβオリゴマーにも結合することを明らかにした。本年度は、Shiga-Y5をアルツハイマー病の遺伝子改変モデルマウスの尾静脈から投与して、7テスラMR画像装置によるアミロイドイメージングに挑戦した。アルツハイマー病の遺伝子改変モデルマウスとして、16-24ヶ月齢のTg2576マウスおよびwildマウスを用いた。麻酔下に、マウスの尾静脈から50mg/kg,100mg/kg,200mg/kgのShiga-Y5を投与した。投与後、マウスを麻酔下に動物実験用7テスラMR画像装置に入れ、10分のシングルパルス測定と50分の画像化測定を投与後6時間まで繰り返した。6時間後、マウスを安楽死させて脳を摘出し、脳内でのShiga-Y5の分布を組織化学的に検索するとともに老人斑の分布と比較した。その結果、Tg2576マウスおよびwildマウスともに投与直後に脳領域にフッ素信号を認め、wildマウスでは速やかにフッ素信号が消失したが、Tg2576マウスではフッ素信号は脳領域に留まっていた。投与後4時間のフッ素脳画像で、Tg2576マウス脳で老人斑の多い脳領域に一致してフッ素画像が得られたが。フッ素画像の強さは投与量依存的であった。Wildマウスではフッ素画像は得られなかった。本研究の結果は、7テスラの高磁場MR装置を用いれば、Shiga-Y5により、50分の測定でMRによるTg2576マウスのアミロイドイメージングができることを示している。
2: おおむね順調に進展している
Shiga-Y5を用いてアルツハイマー病の遺伝子改変モデルマウスのアミロイドメージングに成功し、国際学会で論文発表するとともに国際学術誌(Neuroscience誌)に論文発表できたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
ヒトへの応用を考慮した場合、まだ感度が低いこと、安全性の検証が必要なことなどが課題である。次年度は、より高感度化な試薬開発や測定技術の開発、安全性の試験などに取り組む予定である。
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神戸医師会報
巻: 2月号 ページ: 51-57
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10.1016/j.neuroscience.2011.03.071
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