研究課題/領域番号 |
22300155
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
中村 匡徳 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20448046)
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研究分担者 |
和田 成生 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (70240546)
宮崎 浩 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (00263228)
越山 顕一朗 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (80467513)
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キーワード | 赤血球 / 溶血 / 計算力学 / 可視化 |
研究概要 |
赤血球の巨視的モデルにおいては、今年度、赤血球と壁との衝突および赤血球間の物理的干渉の表現に取り組んだ.ここでは、モデルの実応用を念頭におき、計算的負荷を軽減するために、赤血球間の距離に応じたポテンシャル関数であらわした.これを用いて,赤血球の存在密度から血液の局所的粘性を変えるシミュレーション手法を確立し,血液の非ニュートン性と赤血球の集合的運動との関係について議論した. 赤血球膜破断の分子シミュレーションとしては、面積ひずみを動的に変化させることで非平衡・非定常状態における膜破断現象を分子レベルで解析した.シミュレーションには分子動力学法を用いた.これにより,リン脂質二重層によって構成される細胞膜に対して,面積ひずみを与えると,膜に孔が形成されることがわかった. さらに、本年度は、赤血球変形と溶血発生瞬間の同時可視化計測を試みた.赤血球を流した流路を顕微鏡下に設置し、赤血球の移動とともに流路を移動ステージによって動かすことで、相対的に赤血球を常に顕微鏡の視野内に留め置くことに成功した。これにより、赤血球の運動を長時間に渡って観察する手法を確立した。一方、蛍光イメージングにより溶血を捉えることを考えて、基礎実験をおこなったが,特定の波長を有するレーザー光源を使用すると,高速度ビデオカメラによって捉えられる画像に濃淡が生じることがわかり,改善を試みたが,ハードウェア上の問題もあり、完全には解決できなかった。これにより、定量的な議論から定性的な議論により溶血を捉えるよう方針を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
購入した高速度ビデオカメラが緑色レーザー単色光に対して,色むらが生じてしまい,赤血球形状を求める精度で計測できなかった.本件は,開発企業も把握していなかった事実であり,現在,開発企業とやりとりをしながら,改善に取り組んだ.結果として,色ムラ自体を改善することはできず、赤血球変形と溶血発生過程の同時計測手法の確立までは至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1.赤血球膜破断の分子シミュレーション 赤血球膜を脂質分子のみによる純粋な脂質二重膜系としてこれまでモデル化を行ってきたが、実際にはコレステロールも含まれることを考慮して、コレステロールを含有した赤血球膜モデルを行い、コレステロールの含有率が膜破断に与える影響について調べる。 2.赤血球一個体における溶血発生瞬間計測手法の確立 ルミノール反応を用いて,赤血球一個体における溶血の瞬間を可視化する手法を確立する.これまでに行った基礎実験からルミノールは強アルカリ性溶液でないと蛍光反応が生じないことがわかっている。これに赤血球をそのまま入れると、赤血球膜が溶解し、溶血が生じてしまう。そこで、スーパーオキサイドを利用することで、中性溶液中でのルミノール蛍光反応発生の実験を試みる。その上で生じる蛍光発光を可視化し、赤血球一個体における溶血発生瞬間計測手法の確立を試みる。
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