研究課題
金ナノロッドは近赤外光を吸収すると発熱し、近傍を加熱できる。本研究では、金ナノロッドの発熱効果により皮膚の角質層の透過性を亢進させ、タンパク質を効果的に体内にデリバリーするシステムを開発することを目的としている。この技術はインシュリンによる糖尿病の治療や、抗原タンパク質によるワクチンとなり、光照射と組み合わせた簡便・安価なシステムは新しい医療技術として期待される。本年度は本システムをより現実的なものにするために、従来から用いている円筒カップを用いて処方する手段から、パッチ製剤を用いる手法について開発した。透明ゲルに金ナノロッドと抗原タンパク質を分散させ、それを皮膚に貼り付け、その上から近赤外光を照射するというシステムを提案した。具体的には透明ゲルとして、アガロースやアクリルアミドゲル、また、ゼラチンといった親水性ゲルを試験した。その結果、金ナノロッドや抗原タンパク質はゲル内に担持出来るものの、ゲル外への放出効率が悪かったり、あるいは、動物の体温でゲルが溶解し、目的を達成できなかった。そこで、親油性の透明架橋ゲルの表面に、22年度に使用していたSolid-in-oilエマルション製剤を塗布し、それを皮膚に貼り付け、皮膚内へのタンパク質の透過性を評価した。その結果、有意な皮内への移行が認められ、このことから、金ナノロッドと抗原タンパク質を含むSolid-in-oilエマルション製剤と親油性ゲルとの組み合わせが、有効であると示された。今後はゲルの形状や金ナノロッド、抗原タンパク質の量、さらには、近赤外光の照射強度など様々な条件における免疫応答を評価していきたい。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画にあったパッチ製剤開発について、その設計ポイントが明確になってきた。来年度は具体的な免疫応答について評価する予定であるが、その準備状況は整ってきたので、おおむね順調に研究は進展していると判断した。
24年度の最終年度は、本経皮ワクチンにおけるサイトカイン応答といった詳細な評価を進める。また、ヒートショックタンパク質の誘導について、その免疫増強効果と同時に、加熱効果による組織傷害についても評価を進め、安全性に関する知見も得たい。
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