研究課題
金ナノロッドは近赤外光を吸収すると発熱し、その近傍を加熱できる。本研究では、金ナノロッドの発熱効果により皮膚の角質層の透過性を亢進させ、タンパク質を効果的に体内にデリバリーするシステムを開発することを目的としている。この技術はインシュリンによる糖尿病の治療や、抗原タンパク質によるワクチンとなり、光照射と組み合わせた簡便・安価なシステムは新しい医療技術として期待される。昨年度は光照射と組み合わせる本経皮デリバリーシステムに適用する透明パッチに関する検討を行った。本年度は照射する近赤外光の種類や強度を変えて、どのように金ナノロッドが発熱し、経皮デリバリー効率や生理学的にどのように影響するかについて解析した。 近赤外光の照射デバイスとして連続光レーザーとパルス光レーザーを比較した。まず、マウス皮膚に金ナノロッドを塗布し、連続光レーザーを照射すると、皮膚の温度は上昇し、モデルタンパク質として利用した蛍光ラベルオブアルブミンの皮内への透過が認められた。また、熱ショックタンパク質の誘導が認められ、多数の好中球の浸潤も認められた。このことから、温度上昇に伴う炎症が誘導されていることが示された。一方、パルスレーザーの場合、皮膚の温度は上昇しなかったが、オブアルブミンの透過は認めら、このとき、熱ショックタンパク質の誘導や好中球の浸潤は認めらなかった。パルスレーザーは瞬間的に金ナノロッドを極めて高温に加熱するが、金ナノロッドはすぐに球状に変形してしまい、それ以上発熱できないためである。 連続光レーザーを使用する場合は熱ショックタンパク質の関わる免疫応答を誘導するのに適しており、パルスレーザーの場合は、生理的な影響を殆ど与えずタンパク質を皮内に透過させるのに適していることがわかった。この知見は今後タンパク質の経皮デリバリーシステムや経皮ワクチンシステムを設計する上で、重要な情報となる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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