研究課題/領域番号 |
22300163
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川下 将一 東北大学, 大学院・医工学研究科, 准教授 (70314234)
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研究分担者 |
金高 弘恭 東北大学, 大学院・歯学研究科, 准教授 (50292222)
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キーワード | 微小球 / 多孔質 / 放射線治療 / 温熱治療 / 薬剤徐放 / イットリウム / リン / マグネタイト |
研究概要 |
直径約25μmの放射性あるいは磁性多孔質セラミック微小球を生理食塩水等に懸濁させ、これをカテーテルによりがんのごく近傍の血管に送り込めば、局所的な放射線塞栓治療あるいは温熱塞栓治療が可能となる.さらに、微小球を多孔化し、そこに抗がん剤などの薬剤を保持させれば、薬剤徐放による治療効果も期待できる。本研究では、次世代の複合型低侵襲治療を実現する多孔質セラミック微小球を得る条件を追究することを目的とする。 本年度は、ゼラチン懸濁法による多孔性リン酸イットリウム(YPO_4)微小球の合成を試み、得られた試料の構造を調べた。その結果、YPO_4前駆体を酸性ゼラチンに懸濁し、油相中で冷却固化させ、さらにそれを1100℃で加熱処理すれば、直径25μm程度のほぼ真球状のYPO_4微小球が得られ、同微小球がpH6あるいは7の擬似体液中で優れた化学的耐久性を示すことが分かった。ただし、同微小球は緻密構造であったので、今後、微小球の多孔化を行う必要があると考えられた。 また、噴霧乾燥法による中空セラミック微小球の合成をも試みた。具体的には、リン酸アルミニウム(AIPO_4)前駆体溶液あるいは酸化イットリウム(Y_2O_3)前駆体溶液を噴霧乾燥させ、これを1100℃で加熱処理し、得られた試料の構造を調べた,その結果、AIPO_4前駆体濃度を5重量%とし、そこにポリビニールアルコール(PVA)を2重量%混入させた溶液を噴霧乾燥させ、加熱処理することにより直径10~30mのAIPO_4微小球が得られることが分かった.また、硝酸イットリウム濃度を5重量%、PVA濃度を2重量%としたY_2O_3前駆体溶液からは中空微小球が得られることが分かった、しかし、これを加熱処理すると.微小球の形状は保持されなかった。これは、加熱処理時の窒素酸化物の蒸発によるものと推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、本年度中に「ゼラチン懸濁法による多孔性イットリウム含有微小球の合成」および「噴霧乾燥法による中空セラミック微小球の合成」を試みることになっていたが、概ね予定通りの研究成果が得られ、その成果の一部は学術論文にまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究により、スプレードライヤーを用いた噴霧乾燥法によって、リン酸アルミニウム微小球や酸化イットリウム(中空)微小球が得られることは明らかとなったが、粒径の制御や加熱処理時の崩壊の問題等の課題が残されている。今後、種々の合成パラメータを変化させ、目的の微小球を得る条件を見出す予定である。また、磁性微小球の研究に関しては、今のところあまり着手できないでいるが、今後、実験系をリン酸イットリウムに絞って研究を遂行することにより、本研究の最終目的である、多孔性あるいは中空微小球合成に関する基礎的知見を得ることは達成可能であると見込んでいる。
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