研究課題/領域番号 |
22300164
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
加藤 功一 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (50283875)
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キーワード | タンパク質工学 / 中枢神経 / 再生医療 / 神経幹細胞 / 移植補助材料 / 細胞チップ / コラーゲン / 細胞増殖因子 |
研究概要 |
神経幹/前駆細胞の高度な機能制御が可能な細胞制御因子組込型バイオマテリアルの創製を目的として、以下の3つの研究を進めた。 (1)パーキンソン病の治療を目的として脳内に移植された神経幹/前駆細胞を炎症性細胞から隔離し、また、その細胞に接着シグナルを与えることによって細胞の生存率を高く維持するため、移植細胞をコラーゲンゲル内に分散させ、さらに、ゲル内に組み込んだインテグリン結合性ポリペプチドによって、移植細胞に接着シグナルを与えることを試みた。インテグリン結合性ポリペプチドの設計には、モジュール化制御因子設計法を適用した。これまでの研究成果をもとに、デコリン由来コラーゲン結合性ペプチドとラミニンα鎖由来G3ドメインを選択し、それらの二成分からなるキメラタンパク質を合成した。合成したインテグリン結合性ポリペプチドの構造ならびにコラーゲン結合性について調べた。さらに、コラーゲン-インテグリン結合性ポリペプチド複合体が神経幹/前駆細胞の生存促進に効果のあることを細胞培養試験および動物脳内移植試験によって示した。 (2)細接着シグナルに基づく生存維持効果をさらに向上させるため、細胞間接着に係る接着分子に着目した。NCAMに含まれる機能配列(Ig1~Ig3ドメイン)にコラーゲン結合性ポリペプチドを融合したキメラタンパク質の合成に取り組んだ。現在のところ、その機能評価には至っていない。 (3)神経幹細胞からドーパミン産生細胞への誘導に効果のある制御因子として脳由来神経栄養因子(BDNF)およびグリア細胞株由来(GDNF)に注目し、それらに基材結合性ポリペプチドを融合したキメラタンパク質を合成した。神経幹細胞培養系を用いた機能評価の結果、これらのモジュール化制御因子が目的通りの効果を発揮することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の実施計画として記載した(1)制御因子モジュールの合成とコラーゲンとの複合化、ならびに、(2)コラーゲン-モジュール化制御因子複合体の機能評価に関して十分に目標を達成することができた。また、モジュール化の設計原理をドーパミン産生細胞の分化誘導にも適用できたことは計画以上の成果であった。さらに、この分子設計手法に関する研究が、神経系以外の組織再生に興味をもつ研究者との共同研究に発展した。
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今後の研究の推進方策 |
モジュール化バイオマテリアルの概念は、細胞機能性材料を創生するための普遍的な設計原理を与えることがわかってきた。これまでは中枢神経の再生医療に焦点を絞って研究を行ってきたが、一方で、リンパ節や歯周組織のような他の組織の再生を目指す研究者と交流する中で、この分子デザイン法がそれらの組織再生にとっても意義深いことが予想された。そこで次年度は、神経系の組織再生をターゲットとする一方で、今後のさらなる展開に向けて、異なる組織の再生を目指す研究者との連携も視野に入れて研究を進めたいと考える。
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