研究課題/領域番号 |
22300166
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
川上 浩良 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (10221897)
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研究分担者 |
清水 孝彦 千葉大学, 医学部, 客員准教授 (40301791)
朝山 章一郎 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (90315755)
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キーワード | 酵素 / 抗酸化 / キャリア / ミトコンドリア |
研究概要 |
本研究では、細胞内活性酸素の消去、特にミトコンドリア内で発生する活性酸素に効率的に作用する新規抗酸化機能物質を合成した。さらに、ミトコンドリアが関与する疾患の中で老化と脳神経疾患に焦点を絞り、その予防と治療に関わる『ミトコンドリア標的治療』の創成を目指した。本年度の成果を下記に示す。 (1)マルチ酵素活性を有する新規抗酸化機能物質を合成した。 具体的には、両親媒性新規金属キレート能を有するMnポルフィリンダイマーを合成、その金属キレート能を確認し、水溶液中でのカタラーゼ酵素活性を含めたマルチ酵素活性(SOD活性、ONOO-消去活性)も明らかにした。従来にない新しい抗酸化剤の合成に成功し、今後、アルツハイマー病治療等への展開を図る。 (2)新規抗酸化機能物質を細胞内へ高効率で輸送するキャリアを合成した。 Mnポルフィリンダイマーをリポソーム表面に修飾したナノキャリアの合成に成功、血中安定性等の評価を行い、十分にin vivo系に応用展開できることを確認した。 (3)Mn-SOD欠損マウスを用いた新規抗酸化剤のin vivo評価を行った。 H22年度に合成したMnポルフィリンダイマーを骨格筋特異的Mn-SOD欠損モデルマウスに投与し、その抗酸化効果をin vivoで評価した。その結果、Mnポルフィリンダイマー投与群では、マウスの走行距離や速度に改善が見られ、十分な効果が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミトコンドリア指向性を有するマルチ酵素機能抗酸化剤の合成に成功し、また、リポソーム表面へのその修飾による新規ナノキャリアの合成にも成功した。骨格筋特異的Mn-SOD欠損モデルマウスへの投与による薬理効果も確認でき、特にミトコンドリア内で有効に作用しているか可能性を示唆する結果も得られている。
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今後の研究の推進方策 |
近年、アルツハイマー治療として検討されてきたAβを標的とした治療薬が臨床研究で悉く失敗、新しい治療戦略の立案が求められている。平成23年度に合成に成功した金属キレート能を有するマルチ酵素機能抗酸化剤は、脳内に蓄積した金属除去とフリーラジカル消去を同時に実現できる新しい化合物であるため、アルツハイマー病の発病に関与するフリーラジカルと蓄積金属を共に除去できる、全く新しい概念によるアルツハイマー治療剤への可能性を秘めている。脳内への物質輸送を可能とするキャリア合成が今後の課題の1つである。
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