研究概要 |
本研究は、多様な画像化原理に基づく分子イメージング用造影剤のための高分子キャリヤー設計論を確立することを目的とする。具体的にはMRI, PET, SPECT,超音波の各画像診断法に対して合目的に設計された高分子ミセル、オリゴマー、エマルションの形態を用いて、固形がんにEPR効果でターゲティングし得る造影剤を作製する。 1, SPECT用高分子ミセル型造影剤 SPECT用^<111>Inに対応した非放射性Inを用いて高分子ミセルキャリアーへの導入を行った。用いたポリマーはPEG-b-P(Lys(DOTA))で、リシン残基の全てにキレート基DOTAが結合している。DOTAに対して1.0当量のInCl3を加え、pH6.1、50℃、1時間撹拌した後に限外濾過で高分子分画を得たところ、Inの結合率は99%であった。 2, 超音波造影剤 高収率でパーフルオロペンタン(PFC5)を封入し、小さな粒径のエマルション作製法を検討した。従来は撹拌子による撹拌によって得ていた。今回は一般的な高圧乳化法と、超音波照射法を検討した。用いたポリマーはPEG-b-ポリアスパラギン酸ブロックコポリマーのアスパラギン酸残基に-(CH2)3-(CF2)3-CF3をエステル結合で導入したものである。撹拌法や高圧乳以下法では、PFC5の濃度を0.5vol.%以上に高めると粒径が25℃で600nm程度になるのに対し、超音波洗浄機を用いた方法では200nm程度のキュムラント平均の小さなエマルションを得る事に成功した。また、PFC5とパーフルオロヘキサンを同体積で加えることにより、PFC5の沸点の29℃よりも高い40℃でエマルション作製をしても高収率は変化しなかった。この事実は、揮発性の超音波造影剤であるPFC5の封入反応が、冷却せずともできることを示しており、熱交換が困難な大きなロットでのエマルション作製を可能とする意義がある。
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