研究課題
本研究は、多様な画像化原理に基づく分子イメージング用造影剤のための高分子キャリヤー設計論を確立することを目的とする。具体的にはMRI,PET,SPECT,超音波の各画像診断法に対して合目的に設計された高分子ミセル、オリゴマー、エマルションの形態を用いて、固形がんにEPR効果でターゲティングし得る造影剤を作製する。1,高分子ミセル型MRI造影剤この造影剤は外側にポリエチレングリコール鎖を用いているので、PEG-修飾リポソームに見られるABC現象の懸念がある。ABC現象とは、免疫現象であり、2回目の投与では血中からのクリアランスが大きく増加して、血中濃度が著しく減少し、キャリアーシステムによる診断・治療の継続を不可能とする。これまでに、高分子ミセル型MRI造影剤がABC現象を誘起しないことがわかっていた。今回、蛍光修飾したPEG-リボソームと同時投与することで、ポジティブコントロールであるPEG-修飾リボソームのクリアランスが増加したABC現象が誘起されたマウスでも、高分子ミセル型MRI造影剤のクリアランスが大きくならないことが確認された。この事実は造影剤として繰り返し利用でき、医療での有用性が高いことを示すものである。2,超音波造影剤前年に、高収率でパーフルオロペンタン(PFC5)を封入し、200nm以下の小さな粒径のエマルションを作製することに成功した。このエマルションをマウス尾静脈に投与して血中の濃度を測定した。その結果、血中半減期は2分程度と短いこと、α相が観察されること(血中濃度が100%の濃度から始まること)がわかった。この結果は、このエマルションは投与後数時間待ってから撮像をするタイプではなく、投与から数分から数十分の後に超音波撮像をするタイプの造影剤として適していることを示す。
2: おおむね順調に進展している
造影剤として繰り返し便用するために大きな問題となり得る、ABC現象がMRI造影剤については回避できることがほぼ実証できた。このことがらはSPECT造影剤にも適用し得る。これは大きなそして重要な成果であり、当初の計画以上の成果である。この実験に大きく時間を割いたために、本年度に予定していたXeガス封入の造影剤システムは次年度に廻した。よって、差し引きをとればおおむね順調に進展していると言える。
本年度に実施せず、来年度に廻したXeガスを封入したエマルションシステムに重点を置いて研究を推進する。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (12件)
Pharmaceutical Research
巻: 29 ページ: 178-186
10.1007/s11095-011-0525-3
International Journal of Pharmaceutics
巻: 404 ページ: 271-280
巻: 421 ページ: 379-387
10.1016/j.ijpharm.2011.10.006
Jamrnal of Experimental and clinical Medicine
巻: 3 ページ: 151-158
10.1016/j.jecm.2011.06.002