研究概要 |
本研究テーマでは,生体組織の超音波加熱を促進するキャビテーション気泡を,強力な超音波パルス照射によって生成し得るかどうかが,キーとなる.本年度は、そのようなキャビテーション気泡を,発生する分調波をハイドロフォンにより捉えて検出する方法に加え,高速度カメラにより光学的に検出する方法により研究した.高速度カメラによる方法は,分調波検出による方法のように,光学的に不透明な生体組織中には適用できないので,生体に類似した超音波特性をもち光学的に透明なゲルファントムを作成し,実験を行った.通常の集束超音波治療に用いられるよりも1桁ほど高い超音波強度をもつ100μs程度の集束超音波パルスを照射することにより,目的のキャビテーション気泡をゲル中の焦点付近に生成できることが確かめた.また,このような照射を複数の焦点について行いそれらの付近にキャビテーション気泡を生成した直後に,それらを包含する加熱用超音波照射を行うことにより,摘出生体組織を超音波加熱凝固するスループットを顕著に改善できることを確かめた. また,第2高調波重畳波を用いることにより,目的のキャビテーション気泡を発生するに必要な超音波強度を顕著に低下させ得ることを見出した.すなわち,まず,負圧ピーク強調パルスにより小さなキャビテーション気泡雲を生成した直後に,正圧ピーク強調パルスを照射すると,正圧ピーク強調波が,小さなキャビテーション気泡雲に反射されて位相反転して負圧ピーク強調波となり,それによってキャビテーション気泡雲が大きく成長することを発見した.現在,この結果は水中に反射物をおいた実験系において得られているが,次年度以降は,同様の実験を,音響的により生体に近い実験系において行う予定である.
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