研究課題/領域番号 |
22300185
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鳥橋 茂子 名古屋大学, 医学部, 教授 (90112961)
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研究分担者 |
平田 仁 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (80173243)
川部 勤 名古屋大学, 医学部, 教授 (20378219)
石田 和人 名古屋大学, 医学部, 講師 (10303653)
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キーワード | 間葉系幹細胞 / ES細胞 / 組織再生 / 骨格筋 / 機能回復 / 細胞移植 |
研究概要 |
平成23年度は以下の項目について研究を実施し、成果をあげた。 1,磁気ビーズ法で採集した間葉系幹細胞に、極く僅かではあるが、未分化細胞が混入する。この未分化細胞を除去する方法として、レーザーマイクロダイセクションを用いてレーザーによる消去法が有効であることを確認した。しかし、本法は高額な器機を必要とするので、別の方法として磁気ビーズを2回繰り返して通す方法や、0.5mM EDTAによるディシュからの剥離法を工夫することで一層高純度で間葉系幹細胞を収集できるようになった。さらに、ES細胞由来の間葉系幹細胞はテロメラーゼ活性が高く、長時間高い分裂能を維持できることを利用して、分離後の継代を繰り返し、より多くの移植用細胞を収集できるようになった。 2,本細胞が骨格筋への高い分化能を有することから骨格筋損傷モデルマウスに移植し、骨格筋の再生に寄与することはすでに明らかにしてきたが、実際に骨格筋の機能回復に効果があるか否かを歩行運動解析を行い検討した。間葉系幹細胞を移植したモデルマウスと損傷のみ加えたコントロールマウスをCatWalk(Noldus社)により解析した。その結果、間葉系幹細胞の移植により損傷筋の機能回復が1週間早くなったことが明らかになった。その理由として、移植により間葉系幹細胞が骨格筋に分化すると共に損傷筋の再生が加速され、筋線維の太さが明らかに太いものが多くなった。また、筋を支配する運動神経や運動終盤の再生が一段と速くなった。これは移植細胞から何らかの分化誘導因子や栄養因子が分泌されていることを強く示唆している。これらの結果を国際、国内学会で報告すると共に、英文誌に発表した(Differentiation 2011)。 3,移植した間葉系幹細胞が骨格筋に分化する割合は、移植先のマウスの微細環境に作用されことが明らかになった。すなわち損傷による炎症反応が強い時期(筋損傷24-48時間後)に移植すると高効率で骨格筋への分化が生じたが、非損傷筋ではほとんど骨格筋分化が生じず、また損傷1週間後に移植しても分化効率は低かった。この結果は移植先の微細環境を整えることが非常に重要であことを示している。来年度に向けて新たな課題を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らが開発した「ES細胞由来間葉系幹細胞」について、その作成法を確立しその独創的手法から国際特許の出願まで発展させることができた。また、この新規間葉系幹細胞がこれまでの組織由来間葉系幹細胞に見られない特徴と利便性を持つことも明らかにし、国際学会を含めて学会発表11報、英語論文発表1報にまとめることができた。現在投稿中の論文を含めると研究目的を達成しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において、申請者が当初意図した免疫寛容に関する研究が遅れている。しかし、初期の予想に反して、移植免系寛容性については「アロ」動物間の移植を許容するほど強くは無いことも明らかになった。そこで、この課題に関する研究については変更もやむおえないと考えている。また、本間葉系幹細胞を移植する際、移植先の組織の微細環境、特に炎症反応が密接に関与していることが明らかになったので、今後の研究は細胞移植と炎症反応に焦点を当てて研究を進めるつもりである。
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