研究課題/領域番号 |
22300187
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三谷 章 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50200043)
|
研究分担者 |
松林 潤 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00452269)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | リハビリテーション / ミラーセラピー / 運動イメージ療法 / MEG / fMRI |
研究概要 |
脳イルージョン療法として応用されているミラーセラピーと運動イメージの効果の仕組みについて検索した。 1)ミラーセラピーの効果の仕組みについて脳磁場計測(MEG)システムを用いて検索した結果、鏡像を見ることによって反対側の大脳皮質運動野が賦活することが明らかとなった。さらに、左右大脳半球の一次運動野間において、鏡像を見ることによって生じる賦活のパターンが異なることが示された。すなわち、右利き手を支配する左一次運動野は右利き手および利き手のように見える鏡像の左手を見ている時に強く賦活したが、右一次運動野は右利き手の鏡像を見ている時にのみ強く賦活した。このことは、利き手という要因が大脳皮質運動野の賦活に強く影響することを示唆しており、リハビリテーションにおいてこの利き手の要因をどのように利用できるかについて明らかにすることが、より効果的な療法への応用のために重要と考えられた。 2)脳イルージョンを用いたもう一つの代表的療法である運動イメージ療法についてMEGを用いて検索した。その結果、運動イメージ療法においては1人称・運動感覚イメージを安定して導くことの重要性が示され、さらに、両肢間転移によって1人称・運動感覚イメージがより安定して形成される可能性が示唆された。このことは、両肢間転移による介入が脳卒中片麻痺患者や脳性麻痺患者の運動機能の向上につながるという療法への応用の可能性を示唆した。 3)さらに、明確な運動イメージを形成するためには、患者が正確な身体図式を持つことが重要であることが示唆された。健常者にその身体図式を誤らせる、すなわち身体の外に自身の手があるかのような感覚を生じさせるラバーハンド実験を行い、fMRIを用いてイルージョン形成に関連している脳領域を検索した。その結果、身体図式の形成には頭頂間溝を中心とする脳領域が関与することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り脳イルージョンを用いた療法として知られるミラーセラピーと運動イメージ療法による大脳皮質の興奮作用について検索を進め、それぞれの臨床介入効果の仕組みを示す結果が得られつつある。また、運動イメージの研究によって身体図式の重要性が示唆され、この身体図式形成を担う脳領域の活動を解析するfMRIを用いた新たな研究が展開されている。このように研究の進捗状況はおおむね順調であると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで行ってきた研究の結果から効果的な療法のために重要であると考えられたミラーセラピーにおける利き手の要因と運動イメージ療法における両肢間転移の効果について、より効果的な療法の確立を目的としてMEGを用いてさらに検索する予定である。また、身体図式形成を担う脳活動についての研究は、高次脳機能障害でみられる身体失認の仕組みの解明にもつながる可能性があるので、fMRIを用いてイルージョン形成に関連している脳領域を検索し、その脳活動と臨床介入との関連性について解析する計画である。
|