研究概要 |
FESを用いた運動リハビリテーションシステムを開発するため,以下の研究を行った. 1.開発してきた小型表面電気刺激装置とウェアラブルセンサシステムを統合し,歩行を対象としたプロトタイプFESリハビリテーションシステムを構築した.片麻痺者の遊脚期の足関節背屈をFESにより制御し,同時に下肢関節角度及び各部位の傾斜角度の計測を可能にした.片麻痺者での動作制御・計測結果から,FES制御が適切に機能していること,ならびに,FES制御が制御部位以外の関節角度や傾斜角度に影響を与えることを示唆する結果が得られ,FESリハビリテーションにおける様々な部位の動作計測の重要性を示した. 2.短時間電気刺激による繰り返し運動中の筋疲労をM波を用いて評価する方法について,健常被験者で継続して検証した.全被験者で,通常の単一パルスによるM波では,繰り返し電気刺激による運動時の張力低下や刺激量増加に相当する情報が得られないことを明らかにし,また,追加パルスによって得られたM波は,筋疲労により張力の減少や刺激量の増加が観測されたときに大きく減少し,追加パルスの印加タイミングにより減少傾向が異なることを明らかにした. 3.歩行リハビリテーションの効果を定量的に評価するため,ウェアラブルセンサシステムにより計測した歩行動作の可視化について検討し,簡易アニメーションや角度のグラフ化を一部実現した.また,評価指標として,角度に加え,1歩毎のストライド長計測法を構築し,比較的良好な精度で計測可能であることを示し,さらに,ウェアラブルセンサだけでの関節モーメント計測法の検討を開始した. 4.FES制御法として,繰り返し運動のファジィFES制御の実験的検証,任意の動作を生成する学習型FES制御の計算機シミュレーションに基づく検証を行い,有効性及び実現可能性を示し,繰り返し運動制御のリハビリへの応用可能性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
追加パルスによるM波を用いる筋疲労評価法では,複数被験者で同様の傾向が得られ,筋疲労モニタ開発のための基礎データを収集できた.また,FES制御法の実証試験によりリハビリ応用可能性を示すことができ,さらに,リハビリ効果の評価法の構築とプロトタイプFESリハビリシステムの開発を行い,システムの臨床試験を開始できた.
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今後の研究の推進方策 |
開発してきたプロトタイプFESリハビリシステムの臨床的検証,ウェアラブルセンサシステムでの動作評価指標の検討とその計測方法の確立,短時間電気刺激による繰り返し運動時の追加パルスによる筋疲労評価指標の検討と筋疲労モニタへの応用について研究を行う.患者へのフィードバック方式については,リハビリテーションスタッフによる説明を付加したオフライン提示に着目し,計測結果をアニメーションやグラフにより可視化するための機能の構築と評価指標作成を進める.
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