研究課題
【目的】本年度の課題は,脳へ流入する動脈血流量と脳から流出する静脈血流量を同時計測し,運動時に脳内(頭蓋内)を潅流している実質脳血流量が安静時よりも増えるのか否かを明らかにすることであった.【方法】9名の健康な成人女性被験者が最高酸素摂取量(VO2peak)の30%に相当する強度で5分間の自転車運動を半仰臥位姿勢で行った.その安静時および運動時において,内頸動脈,上大静脈,右鎖骨下静脈,左鎖骨下静脈における血管径と血流速度を超音波法により計測し,それらの値から,内頸動脈血流量,上大静脈血流量,右鎖骨下静脈血流量,左鎖骨下静脈血流量を各々算出した.脳へ流入する頭部動脈血流量は内頸動脈血流量とした.また脳から流出する頭部静脈血流量を上大静脈血流量から左右の鎖骨下静脈血流量の合計値を差し引いた残余量とした.【結果】運動時において頭部動脈血流量は安静時よりも有意に増加した.一方,運動時の頭部静脈血流量は,安静時よりも有意に低下することが示された.【考察】頭部の皮膚組織へ配分される動脈血流量は本実験のような短時間の低強度運動時には増大しないとされていることから,内頸動脈血流量の増加は脳内へ流入する頭部動脈血流量の増加を示すと考えられる.一方,頭部静脈血流量の低下は,静脈の血管閉塞が関与したのではないかと考えられる.特に半仰臥位姿勢の運動時には外頸静脈や内頸静脈が閉塞(collapse)しやすいことが報告されていることから,これらの静脈血管の閉塞が頭部静脈血流量を低下させたと考えられる.【結論】短時間の低強度運動時には,頭部に流入する「動脈血流量の増加」と頭部から流出する「静脈血流量の低下」のために,脳内を潅流する実質脳血流量が安静時よりも有意に増大すると考えられた.このような実質脳血流量の増大の生理機能については,今後の課題である.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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