研究課題/領域番号 |
22300206
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
三木 ひろみ 筑波大学, 体育系, 准教授 (60292538)
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研究分担者 |
岡出 美則 筑波大学, 体育系, 教授 (60169125)
長谷川 悦示 筑波大学, 体育系, 准教授 (80272227)
宮崎 明世 筑波大学, 体育系, 助教 (10517197)
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キーワード | 社会人基礎力 / キャリア教育 / 学士力 / 教師教育 / 英語 / コミュニケーション力 |
研究概要 |
体育専攻生とその他の専攻生を対象に社会人基礎力テストを実施した。体育以外(経営、社会工学、国際、人文、芸術)の専攻生は、キャリア関連科目を受講しているキャリアに対する意識の高い学生であったが、問題解決力総合得点最高点が7%であったのに対して、体育学部生の13%が最高点レベルであった。体育学部生(239名)の集団成績は、情報収集力、情報分析力、課題発見力、構想力のリテラシー、問題解決力のコンピテンシー、コミュニケーション力・マネジメント力、自己管理力がいずれも全国レベル以上で、特に情報分析力と自己管理力が高かった。体育学部生の社会人基礎力は高いことが分かった。体育の単科大学である鹿屋体育大学でも同様のテストを実施し、現在比較分析中である。社会人基礎力を高めることを目的とする総合演習では、志望している職業についての情報収集と職業観の形成、働くことに関する意見の読み取りと議論を行った。受講生の自己評価と記述式のテストの結果、読み取りや自分の意見をまとめ、発表する力は向上したが、発言や意見を解釈したり言い換える力、議論を展開する力を高めることが難しいことが分かった。また、専門語学への橋渡しの英語の授業で能力別にクラス編制を行い、高い競技成績を持ちスポーツ推薦で入学し、英語力が一般入学の学生よりも劣る学生(14名)を少人数クラスとして、通年で基礎英語を重視した授業を通年で行い、授業への取り組みと英語力の向上を調査した。授業の結果、いずれの受講生も出席率は良好で、基礎英語を習得し、辞書を使用してスポーツに関する英文を読むことができ、英文の内容についての質問文を作成することができるようになった。受講生による授業評価の総合評価は5点満点中4.29、自ら積極的に授業を受けるように工夫したという評価4.27と、教職科目や専門科目など、その他の9つの科目(受講生数32名~160名、評価3.57-4.22)と比較しても高かった。高い競技経験を持つ学生は、苦手な科目でも能力別の少人数クラスで実施することで学習意欲と成果を高めることができると言える。海外でも文化的背景の異なる人たちと活動するできる力が求められていることを受けて、9カ国から大学生・大学院生が参加して体育・スポーツ科学に関する講義と実技、グループワークによる研究計画を行うTsukuba Summer Instituteを実施し、プログラム終了後に各国参加者にプログラムの効果についてレポートを提出させた。その結果、本プログラムは、英語圏からの参加者にとっては、異なる文化圏の参加者の意見を引き出すコミュニケーションの機会となり、非英語圏の参加者にとっては、海外に視野を広げ欧米や日本への留学を考えるきっかけとなっていたが、日本人大学院生の多くは英語力や積極性の不足を感じる機会となっていたことが分かった。英語によるコミュニケーションを高める機会を持つ以前の準備プログラムの必要性が示唆された。教職課程において体育学部生が習得する教師力についても教師行動評価尺度を用いて分析し、体育授業に必要な最低限の行動が取れるようになることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
体育学部生のワークアビリティの評価と育成プログラムを検討するために、様々なプログラムやテストを実施することができている。語学(英語力)や、英語によるコミュニケーション力も含めて、体育学部生にこれからますます求められる国際的コミュニケーション力についても検討することができた。また、国際的コミュニケーション力を高めるプログラムを実施することを通じて、海外の大学の教員から体育系の学生のコンピテンシーについて情報交換や議論ができている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは、ワークアビリティの様々な側面について、試験的にプログラムを実施し、外部テストと記述による評価を行ってきた。今後は、これらのプログラムの有効性を検証し、プログラムや指導法をモデルとして提案することに着手する。また、外部テストの結果と、一般的なコンピテンシー・リテラシーの概念と、体育学部生を対象とした個別のプログラムから得られた評価を照らし合わせて、体育学部生のワークアビリティの評価方法を抽出する。次に、モデルに基づいて、体育学部生のワークアビリティを高めるプログラムを作成して実施し効果を検証する。また抽出した体育学部生のワークアビリティ評価法を用いて評価を行う段階へと進む。つまり、これまでのワークビリティについての概念整理と、様々な側面からのワークアビリティの検討というトップダウンから、個々のプログラムや評価を基にモデルや評価法を検討するポトムアップのプロセスに進み、そして、最後に抽出したモデルや評価法の評価を行うというように進めていく。研究遂行上の問題点は、日本の体育学部生を取り巻く社会や経済状況によって求められるワークアビリティが短期間に変化していくことであるが、有効なワークアビリティの育成のために、その変化に対応した研究に努める
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