本研究は、4年の期間を設けて、スポーツ実践における人間の生の経験と体育における人間形成の可能性について検討するものである。スポーツにおける「他者との交流」や「コミュニケーション」によって得られる人間の多様な生の経験が、児童・生徒の直面する「心と体の問題」の解決に向けて貢献できるのだという観点から、「スポーツと人間の生の経験」、「スポーツの教育的価値」、「体育における人間形成」について考察しようとした。そのために設定した課題は次の五つ、すなわち、(1)「心身を一体として捉える」とはどういうことか、(2)「体や心への気付き」とは何か、(3)他者との交流を必然とするスポーツ実践における人間の生の経験とは何か、(4)「生きる力」を育む体育においてスポーツによる人間形成の可能性はあるのか、(5)体育でなければ成しえない人間形成の意義とは何かであった。 本年度は、本研究の最終年度にあたり、四つ目の課題と五つ目の課題について、以下のような成果を得た。昨年度から継続する四つ目の課題については、2013年8月4日かち10日まで開かれた第23回世界哲学会議(アテネ)で、成果の一部を発表した。五つ目の課題に関しては、2013年9月4日から8日までフラートン(アメリカ合衆国)で開催された、第41回国際スポーツ哲学会で成果の一部を発表することができた。2014年3月には、上記の課題ならびに、スポーツの達成が人間の生の経験に対して持つ意味について、本研究の研究協力者(海外共同研究者)であるレンク教授に研究成果のレビューを受け、研究成果報告書の作成に向けて専門的知識の提供を受けた。
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