研究課題/領域番号 |
22300212
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研究機関 | 公益財団法人国際科学振興財団 |
研究代表者 |
八木 玲子 公益財団法人国際科学振興財団, 研究開発部, 専任研究員 (80281591)
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キーワード | 感性脳 / 療育 / 治療 / 音響 / 音楽 |
研究概要 |
1.アコースティック楽器システムに関する基礎調査 (1)世界各地の古代~近現代の楽器を対象に、a.発音機構や奏法、b.楽器の誕生と発達、他の地域への伝播などの歴史的変遷、c.これらの音楽文化の基盤を成す社会的・文化的背景に関する調査を行なった。(2)世界各地の代表的な楽器の演奏音の音源を得て、それらの音響物理構造解析を行い、楽器音の感性脳神経回路の活性化効果に関する基礎資料の充実をはかった。(3)楽器製作のための素材および技術の検討を目的として、日本の地域伝統産業に関する文献調査・現地調査を継続した。 2.教育・治療用アコースティック楽器システムの基礎設計 教育・医療現場における療育的・療法的音楽活動に関する実地調査を通じて、高度な訓練を必要とせず容易に演奏に参加することが可能であり、生成される音が感性脳神経回路を活性化することでヒトが本来具えている音楽の受容・生成能力をひきだしうる楽器システムの諸条件に関する検討を継続し、楽器のプロトタイプ・システムの基礎設計を進めた。 3.超広帯域マルチチャンネル電子音響音楽システムの構築 (1)22年度に収録した超広帯域マルチチャンネル音響録音を素材として、アコースティック楽器システムの演奏音を持続的に補完するための超広帯域背景音響の編集を行った。(2)楽器演奏音の感性脳賦活効果を時宜に応じて補完するための電子音響音楽生成システムとして、電子楽器の演奏音の音響物理構造特性を人為的に変化させて生成することのできる音響物理構造特性可変型の超広帯域電子楽器システムのプロトタイプを構築した。 4.感性脳神経回路賦活効果の複合評価手法の開発 3により得られた音響音楽に触れている時の感性脳神経回路の賦活効果を、計測時のストレスを極力低減させた複数の指標で総合的に評価するための複合評価手法の開発を進めた。a.脳波、光トポグラフィなどの非侵襲的脳機能イメージングを中心とした生理的評価、b.抑うつ・不安尺度やVisual Analog Scaleなどを用いた心理的評価、c.無意識的な行動反応を指標とした行動的評価を組み合わせて評価するための具体的手法の検討を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画のうち、「1.感性脳神経回路を賦活する音響音楽システムの開発」の小項目「(1)アコースティック楽器のアンサンブル・システムの開発」および「(2)背景音響用の超広帯域音響記録・編集・再生システムと音響ソフトウェアの開発」については、計画通りに研究が進捗している。(2)についてはプロトタイプの構築が終了し、来年度は現場の試験運用に供することが可能であり、当初の計画以上に進展している。「2.音響音楽の物理構造特性の解析・評価手法の開発」および「4.感性脳神経回路賦活効果の検証」については、国立精神・神経医療研究センターとの共同研究により順調に進行しており、4については、計測時のストレスを極力低減させた複合的評価手法の開発がほぼ終了している。「3.運用プログラムの開発」については、幼児教育および精神科医療の現場での療育・治療を目的とした音楽活動の実地調査を通じて順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現時点で、研究計画の変更および研究を遂行する上での問題は生じておらず、今後は、当初の研究計画にもとづいて研究を進めていく予定である。
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