研究課題/領域番号 |
22300212
|
研究機関 | 東京成徳短期大学 |
研究代表者 |
八木 玲子 東京成徳短期大学, その他部局等, 准教授 (80281591)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 感性脳 / 治療 / 教育 / 音響 / 音楽 / 超広帯域音響 |
研究概要 |
1.アコースティック楽器システムに関する調査と基本設計:世界各地のアコースティック楽器に関する調査を継続し、複数の楽器について、a.発音機構、b.発音構造の歴史的変遷、c.演奏音の物理構造の計測を行った。cにより得られたデータについて、人間の知覚を超える物理構造に着目し、先行研究の知見から感性脳神経回路賦活効果が高いと考えられる楽器の発音機構の特徴を抽出した。以上の調査結果にもとづき、開発中のアコースティック楽器システムの基本設計を継続した。 2.超広帯域音響ソフトウェアの開発:楽器音および熱帯雨林の自然環境音の超広帯域マルチチャンネル・ディジタル録音を継続した。得られた記録物を対象に、超広帯域音響編集システムを構築して編集を施し、超広帯域音響ソフトウェアを開発した。 3.超広帯域音響呈示システムの構築:1により開発した超広帯域音響ソフトウェアを、人間の可聴域上限を大きく上回る100kHzに及ぶ良好な特性で空気振動に変換しうる超広帯域音響呈示システムを構築した。 4.音響物理構造可変呈示システムの開発:2により構築した超広帯域音響呈示システムを中心に、生成する音響音楽の周波数帯域、ゆらぎ構造、フラクタル構造、可聴域と可聴域をこえる超高周波成分の相互相関構造などを変化させて呈示しうる音響物理構造可変呈示システムを開発した。 5.感性脳神経回路賦活効果の検証:2で作成した超広帯域音響ソフトウェアを3により構築した超広帯域音響呈示システムを用いて再生した場合の感性脳神経回路賦活効果について、健常者を対象に、脳波を指標とした生理学的手法と質問紙を用いた心理学的手法を組み合わせた複合評価実験により検証した。 6.精神科患者を対象とした予備的評価実験の実施:2~5により健常者において安全性と感性脳賦活効果の確認された音響ソフトウェアを用いて、精神科患者を対象とした予備的な評価実験を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画のすべての項目について予定どおりの研究成果があがっていることから、研究全体がおおむね順調に進展していると考える。 当初計画およびそれぞれの進捗の概況は以下のとおりである。 「1.感性脳神経回路を賦活する音響音楽システムの開発」の小項目「①アコースティック楽器のアンサンブル・システムの開発」については、調査および基本設計が順調に進んでいる。「②背景音響用の超広帯域音響記録・編集・再生システムと音響ソフトウェアの開発」については、国際科学振興財団との共同研究により、昨年度開発したプロトタイプよりもさらに良好な特性と感性脳賦活効果をもつ音響記録・編集・再生システムと音響ソフトウェアの開発を完了することができた。 「2.音響音楽の物理構造特性の解析・評価手法の開発」については、国立精神・神経医療研究センターとの共同研究により200kHzに及ぶ音響物理構造の変化を10ミリ秒単位で可視化する技術の開発を完了し、研究現場での計測・解析に運用している。 「3.感性脳神経回路賦活効果の検証」に関しては、健常者を対象に、開発した音響ソフトウェアを呈示試料とした複合評価実験を実施し、その感性脳賦活効果が統計的有意に確認された。 「4.臨床現場での試験運用」については、3により有効性・安全性が確認された音響ソフトウェアおよび音響呈示システムを用いて、国立精神・神経医療研究センターとの共同研究により、気分障害を中心とする精神科患者を対象とした試験的な評価実験に着手することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
現時点で、研究計画の変更および研究を遂行する上での問題は生じておらず、今後は、当初の研究計画にもとづいて研究を進めていく予定である。
|