研究課題/領域番号 |
22300216
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
菊 幸一 筑波大学, 体育系, 教授 (50195195)
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研究分担者 |
齋藤 健司 筑波大学, 体育系, 准教授 (80265941)
奥田 睦子 金沢大学, 経済学経営学系, 准教授 (90320895)
高橋 豪仁 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (40206834)
松尾 哲矢 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (00190413)
海老島 均 成城大学, 経済学部, 教授 (60203650)
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キーワード | スポーツ政策 / 公共性 / 国際比較 / 内在的価値 / 道具的価値 / スポーツ基本法 / スポーツ宣言日本 |
研究概要 |
2年次の研究目的は、欧米やアジアのスポーツ政策の現状と課題に基づいてスポーツ政策の公共性概念からみた我が国のスポーツ政策システムの検討を行うことであった。 調査対象国は韓国、中国、ドイツ、フランス、イギリス、アイルランド各国であり、それぞれの現状と課題の特徴が検討された。具体的には、スポーツに関する基本法の成立過程とその実効性を担保する「権威」がどのように形成されるのかが各国のスポーツと社会との関係性及び歴史性によって規定されていること、そのことが政治的な概念である「公共性」概念の形成過程と並行した特徴を示しているということであった。総じて、アジアではスポーツの公共性が当初から政策的な道具としてとらえられており、我が国もそのような特徴をもっている。これに対して、今回の調査対象であったヨーロッパ各国では、総じてスポーツと人間との内在的な関係や内在的価値(intrinsic value)それ自体を公共性の出発点としてとらえ、これに基づく道具的価値の「可能性」を期待しているところに止まっている。ここで言う「止まっている」というのは、その成果をあくまでスポーツの自由性や自在性に委ねている、という意味で、極めてopenな、下からの「公共性」概念であり、その社会的モデルとして機能しているということである。 ときあたかも、本年度は我が国において「スポーツ基本法」の制定とそれに続く「スポーツ基本計画」が策定され、その政策形成過程の問題が明らかになりつつある一方で、日本体育協会・日本オリンピック委員会が創立100周年を記念して「スポーツ宣言日本」を内外に示した。両者のスポーツのとらえ方は対照的であり、スポーツ政策の公共性を考察する上においても興味深い論点を浮かび上がらせている。本研究における比較考察は、今後の我が国おけるスポーツ政策の公共性をどのように形成し、ビジョン化していくべきかを示す重要な意義を持つことものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた調査対象国の調査の本調査をほぼ終えることができ、各国のスポーツ政策の基本フレームから公共性を視点とした比較がほぼ可能な段階まで到達することができた。また、各調査内容から利用可能なデータベースの作成もほぼ行うことができた。しかしながら、北米の調査については予備的な段階に止まっていることや共通の調査項目の策定については、なお未完成な部分があり、これらの課題を多少残していることから、現在の達成度を「おおむね」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、次年度の研究最終年における計画に沿って、内外の研究発表を通じて本研究に資する有益な意見を聴取するとともに、国際比較からみた我が国スポーツ政策の公共性のあり方やビジョンをまとめていく。その要点は、1)定義2)目的3)方法4)内容の各比較によって構成される予定である。しかし、スポーツの公共性を定義するグローバルな観点からみた歴史社会的な把握については、なお共通の課題を残しているところがあるので、文献研究を通じた再精査を行う必要があると考えている。
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