研究概要 |
細胞内に蓄積したカルシウムイオン(Ca^<2+>)は筋の損傷や再生の誘導因子として関与することが考序られる.これまで筋細胞内への流入経路が異なることが示されている伸張性収縮(ECC)負荷ならびに薬理学的作用によって上昇した細胞内Ca^<2+>の経時変化については明らかになっていない.そこで,本年度は,バイオイメージングによりECC終了時から60分間後までの細胞内Ca^<2+>動態とブビカバイン(BVC)付加後のCa^<2+>動態の蓄積パターンを明らかにすることを目的とした.実験にはWistar系雄性ラットを用いた.麻酔下で外科的に露出した脊柱僧帽筋に,Ca^<2+>蛍光指示薬であるFura2-Amを付加し,電気刺激による50回のECC収縮を5分の安静期間をおいて10セット負荷した.筋線維毎に任意の複数箇所の細胞内Ca^<2+>膿度の変化を,ECC収縮負荷後またはBVC付加後から60分間観察した.その結果,ECC後のCa^<2+>蓄積動態は筋線維間で異なり,細胞内Ca^<2+>が有意に上昇した部分では,少なくとも観察した60分間は増加した値が継続された.また,この蓄積は細胞膜伸展に伴って開口するSACチャンネルのプロッカーによって抑制されることを明らかにした.BVC付加後においても有意な一過性のCa^<2+>濃度上昇が観察されたが,60分間で安静値レベルへと回復した.以上のことより,運動誘発性によるCa^<2+>蓄積と薬理的な作用によるCa^<2+>蓄積パターンが異なるごとが明らかにされた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞内へのカルシウムイオンの流入経路と消去経路の解明に取り組む予定であった.本研究の観察モデルは数時間までは可能であるものの,伸張性収縮(ECC)負荷モデルの消去経路の解明には,さらに長時間の経時的なプロトコールが必要であることが判明した.そのため,消去経路の解明を目的とした実験を実施することができなかった.
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