本研究課題の目的は前年度に引き続き、①MRIによる競技種目別の腰椎椎間板変性率調査、②スポーツ動作における体幹挙動解析を行い、障害発生に関わる腰椎挙動を推定し、得られた結果から、③腰部障害危険因子となる腰椎挙動を抑制するための方策(体幹深部筋トレーニング・ストレッチングなど)を考案し、④スポーツ選手のみならず一般の腰痛者に対しても実践・評価することであった。これらに対して以下のような取り組みを行った。 ①MRIによる競技スポーツ選手の椎間板変性率調査を継続して実施しチアリーダーを対象に調査を行ったがポジション間に有意差を認めなかった。 ②競技スポーツ動作を、三次元動作解析装置とワイヤレス筋電計によって解析し、サイドステップ動作時には切り替え指示に接地直前から内転筋の筋活動がフィードフォワード的に働き始め接地時の安定性を保持していることが推察された。今後は同様の筋活動収縮様式を他のスポーツ動作においても明らかにし動的安定性獲得のメカニズムを追及していく。またこの内転筋の活動はサッカーなどのサイドステップを多用する競技に好発する鼡径部痛症候群の発症に関与することが疑われた。 ③実際の競技の現場において体感深部筋トレーニングを実践しており、ロンドン五輪の競泳チームにおいては本課題から有効性が確認されたトレーニングを用いて選手の障害予防のみならず、競技力向上に寄与した。 ④競技スポーツ選手に実践された方法の中で簡易に実践できる方法を選択して一般腰痛者への運動療法としてメディアを通じて紹介している。日本整形外科スポーツ医学会と製薬会社の連携で本方法はパンフレット化されエビデンスに基づいた運動療法として臨床医に紹介されている。
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