研究概要 |
本研究では地球温暖化や熱中症等に対処できる現代日本人の健康水準を向上させるために,高温環境における現代日本人の適応能力を総合的に解析・評価し,最終的に高温環境における適応能力を向上させる方策について検討することを目的とする。 今年度は,現代日本人の環境変化(春夏秋冬)に対する生体反応を生理学的・生気象学的測定・実験から明らかにするため,健康成人男女の安静時のエネルギー代謝,睡眠時の水分損失,温熱負荷に対する熱放散反応,日常生活時に暴露されている温度と自然環境の気温を春夏秋冬に測定した。さらに近年における熱中症の疫学的調査を実施した その結果、運動習慣を有する被験者群については日常生活時に暴露される温度が各季節の環境温度に近似し,さらに睡眠時の水分損失や安静時代謝,および温熱負荷に対する熱放散反応に明らかな季節変動が認められた。しかし、運動習慣を有しない被験者群については日常生活時に暴露される温度が夏に低く,冬に暖かい傾向が認められた。さらにこの被験者群には睡眠時の水分損失や安静時代謝,および温熱負荷に対する熱放散反応に顕著な季節変動が認められなかった。また近年の熱中症による搬送数や死亡数は増加傾向にあるが、スポーツ活動による熱中症事故は減少傾向にあることが明らかになった。 したがって高温環境における現代日本人の適応能力は日頃の運動習慣によって異なり、特に運動習慣を有しない日本人は暑熱適応能力が低いことが示唆された。
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