早期の性行動は,若年妊娠や性感染症などの身体的健康問題を引き起こすとともに,精神的,社会的健康を損なう恐れが高い危険行動である。しかし,我が国青少年の性行動に関する幾つかの大規模調査によれば,青少年の性行動は1990年代以降急速に活発化,早期化してきており,特に高校生女子においてその傾向が顕著である.そのため,性行動が活発化する前の中学生を対象として,妥当な行動変容理論に基づいた,そして学校現場で実行可能な性教育プログラムの開発が求められている。 本研究の目的は,国内外の研究によって性行動を含む青少年の様々な危険行動と密接な関係があることが明らかになっているライフスキルを形成することに焦点を当てた中学生用性教育プログラムを開発し,介入研究を行い,その有効性を検討することであった。 平成26年度は,埼玉県川口市の某中学校に平成23年度に入学した中学生を対象として,3年間にわたって実施したプログラムの有効性について,授業者による授業評価表,授業記録,生徒に対する質問紙調査の結果に基づいて検証し,プログラムの改訂作業を行った。そして,中学校1年8時間,中学校2年6時間,中学校3年5時間から構成される「ライフスキルを育む『思春期の心と体』授業事例集」を完成し,刊行した。また,本プログラムを普及するために,兵庫県伊丹市,鹿児島県鹿児島市,広島県福山市,愛知県名古屋市,埼玉県川口市でワークショップを開催し,養護教諭,一般教諭,教育委員会指導主事などを対象とした研修を行った。
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