研究概要 |
本研究では,一過性高強度運動が唾液ストレスタンパクであるHeat Shock Protein 70(HSP70)応答に及ぼす影響を検討することを目的とした.喫煙・服薬および運動習慣のない若年健常男性15名(平均値±標準偏差:年齢23.7±1.5歳,身長171.8±6.2cm,体重67.3±5.8kg)を対象とし,自転車エルゴメーターを用いて最大酸素摂取量の75%の強度で60分間運動を行った. 運動開始前,運動終了直後,運動終了1時間後,運動終了2時間後,運動終了3時間後,運動終了4時間後に唾液HSP70濃度を測定した. 本研究の結果から一過性高強度運動後に唾液HSP70の濃度が運動前と比較し高値を示した.このことから唾液HSP70濃度は運動ストレスにより上昇することが考えられた.これまで唾液HSP70の運動応答を検討した報告はなく,運動ストレスと唾液HSP70濃度の関係は不明であったが,本研究の結果から唾液HSP70がコンディションを把握する指標となる可能性があることが明らかとなった. しかし,唾液HSP70の一過性高強度運動後の応答は,先行研究で報告されている血中HSP70の応答と同様ではなく,運動中または運動直後に血中HSP70濃度が上昇するのに比較し,唾液HSP70は運動中および運動直後には変化が認められず,運動終了4時間後に上昇することが認められた.このため,唾液HSP70の分泌経路については,これまで考えられていた血漿成分からの漏出以外の経路を検討する必要がある.今後運動時間や運動強度について唾液HSP70応答を詳細に検討することで,唾液HSP70がコンディションを把握するための指標として有用性を明らかに出来るものと考えられる.
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