研究課題/領域番号 |
22300235
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
河野 一郎 筑波大学, 名誉教授 (00132994)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 口腔免疫 / 運動 / ヒートショックプロテイン / アスリート |
研究概要 |
本研究では1ヶ月の高強度トレーニングが身体に与える影響を,唾液分泌型免疫グロブリンA(SIgA)分泌速度と唾液Heat Shock Protein (HSP)70濃度の変化を指標とし検討することを目的とした. 対象は大学競泳選手34名(男子23名,女子11名)とした.シーズン開始から1ヶ月後の高強度トレーニング期間(1ヶ月間)を測定期間とし,測定期間1週間前に事前測定(Pre)を行い,Pre測定以後1週間毎に唾液を採取した(それぞれ,Week1,Week2,Week3,Week4 ). 本研究の結果,唾液SIgA分泌速度はPreと比較し,Week1,2,3,4において低値を示した.HSP70濃度はWeek3において他の測定ポイントと比較して高値を示した.また,アンケートによる主観的疲労度はPreと比較し,Week3において有意に高い値を示した. 高強度トレーニング期間中に唾液SIgA分泌速度の低下が見られたものの,カゼ症状を示した選手はいなかった.HSP70濃度と主観的疲労度については,相関関係は示さなかったが同様の変化を示した.血中のHSP70は単球を刺激し炎症反応を促進させる働きを持つため,HSP70濃度の増加が炎症反応を促進し主観的疲労感の増加に影響を与えた可能性が考えられる.HSP70濃度について,一過性高強度運動を用いた短時間の検討では唾液中濃度と血中濃度とで相関関係がないことが報告されているが,長期間の変動について唾液中濃度と血中濃度との比較検討はなされていない.今後,唾液HSP70と血中HSP70との関係を検討することで,唾液HSP70濃度のコンディション評価指標としての有用性を明らかに出来るものと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,競技選手や高齢者の良好なコンディション維持のため,ストレスタンパク(Heat Shock Protein 70:HSP70)を用いたコンディションの評価の有用性,および免疫系の運動応答メカニズムに対するストレスタンパクの関与を明らかにするため,①HSP70の一過性運動応答を明らかにする.②HSP70の継続的な運動応答を明らかにする.③合宿中の競技選手のHSP70の応答を明らかにする.④高齢者の運動トレーニングに対するHSP70の応答を明らかにすることを目的としている.これまで①,②,③について検討し,予定通りの成果を得ており、おおむね順調に進展していると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
これまでは,健康成人を対象として,ヒートショックプロテイン(HSP)の運動応答やアスリートを対象として,実際のスポーツ活動に対する応答を調べてきた.HSPは,免疫系の賦活に関わることが知られており,加齢による免疫機能低下に対する運動効果におけるHSPの関わりについては不明である.そこで今後は,健康促進を目的とした高齢者の運動トレーニング中に,食事,体調,気分に関するアンケート調査,体重の測定,唾液HSP70の濃度を測定することで,高齢者のコンディションを総合的に評価・検討する予定である. 運動習慣のない健康な高齢者を対象とし,マシンによるレジスタンストレーニングおよび自転車運動を週2回12週間継続して実施してもらう.トレーニングの開始前および開始後において,唾液HSP70濃度,唾液SIgA分泌速度について酵素免疫法を用いて測定し,運動効果テスト(最大挙上重量,有酸素性作業能力,新体力テスト)とアンケート(風邪,の兆候調査,摂取栄養調査)を実施する予定である.
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