研究概要 |
サルコペニア後期高齢者を対象に3か月間行った運動、栄養補充が体力や体組成の変化に及ぼす影響を検討することを目的とした。地域在住75歳以上の高齢者1,377名を調査し、筋肉量の減少、筋力低下、BMI減少、歩行機能の低下者をサルコペニアと操作的に定義し、該当者304名(22.1%)を選定した。304名を対象にサルコペニア改善教室参加者を募集したところ、155名が参加を希望し、149名が不参加であった。参加希望者155名をRCTにより、運動+栄養群38名、運動群39名、栄養群39名、健康教育群39名の4群に分けた。運動群には週2回、1回当たり60分の筋力強化運動を、栄養群にはロイシン42.0%含有の必須アミノ酸3gを1日2回補充する指導を3か月間実施した。本研究のプロトコルは東京都健康長寿医療センター倫理委員会の承諾を得た。また、介入参加者にはプログラムの内容、指導期間、指導効果などについて詳細に説明し、介入参加有無を自ら選択するように指導すると共に自筆の承諾書を得た上で行った。4群間の初期値を比較したところ、年齢、身長、体重、BMI、筋肉量、骨格筋量、歩行速度、膝伸展力、運動習慣、尿失禁、骨粗鬆症既往、糖尿病既往等々全項目で有意差はなかった。 3か月間の変化を群間で比較した。その結果、足の筋肉量(F=4.253,P=0.007)、通常歩行速度(F=4.213,P=0.007)、最大歩行速度(F=9.374,P<0.001)、膝伸展力(F=3.558,P=0.020)で有意差が見られ、運動+アミノ酸補充群の変化が有意に大であった。介入前後における足の筋肉変化量は、運動群と運動+アミノ酸補充群で、通常歩行速度の変化量は、アミノ酸補充群、運動群、運動+アミノ酸補充群で、膝伸展力の変化量は運動+アミノ酸補充群で有意な変化を示した。一方、「足の筋肉量+膝伸展力」の変化は「運動+アミノ酸補充群」でOR=4.89(95% CI=1.89-11.27)、「足の筋肉量+通常歩行速度」の変化は「運動+アミノ酸補充群」でOR=4.11(95% CI=1.33-13.68)で有意に高かった。プログラムの長期効果を検証するために、追跡調査を平成24年10月に実施する予定である。
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