研究課題/領域番号 |
22300256
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
朝倉 富子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特任准教授 (20259013)
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キーワード | 味覚 / 持続性 / 表面プラズモン共鳴 / 物性 / リポソーム |
研究概要 |
食品の「おいしさ」は、味、匂い、舌触り、温度、歯ごたえ、色など五感すべてで認識される感覚によって評価される。特に味はおいしさの主たる要因である。味には五基本味以外にも辛味、渋味、えぐ味など科学的な味ではなく、痛覚などの体性感覚を刺激する味もある。さらに「なめらかな味」「粉っぽい味」など物性が味とリンクする例も少なくない。近年第6番目の味といわれているコク味も厚み、広がり、複雑さ、持続性といった言葉で表現されるように、物性と味とは密接な関係がある。現在までのところ、これらの味を評価する系としては官能評価があるのみである。本研究では、これらの複雑な"味"を評価する客観的な系を構築することを目的としている。 昨年度は表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて味物質とモデル味細胞膜との相互作用を測定した。その結果、食品成分を相互作用の強いグループ、弱いグループ、その他のグループに分類することに成功した。本年度は、この系を発展させ、味の持続性を有する甘味タンパク質、口に含んだあとに酸を味わうとこれを甘味に変化させる味覚修飾タンパク質、甘味を抑制するギムネマ酸など、舌上に保留する可能性の高い種々の物質に関して、人工味細胞との相互作用を本法を用いて数値化した。その結果、モデル味細胞との相互作用はソーマチン、モネリン、ミラクリンの順に強かった。また、食品成分間の相互作用を測定する方法として新たに等温滴定カロリメトリー(ITC)を用いて評価する系を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
味の持続性を客観的に評価する系の構築を目指す本研究では、初年度に表面プラズモン共鳴を用いて、脂質二重膜とのその後作用を測定する系を構築した。本年度は、味の持続性が報告されている分子をこの系に適用し、脂質膜との相互作用を数値化することに成功した。研究はおおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は表面プラズモン共鳴に加え、他の評価系(等温滴定カロリメトリーを用いる)の構築し、評価値の比較を検討する予定である。
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