食品の「おいしさ」は、味、匂い、舌触り、温度、歯ごたえ、色など五感すべてで認識される感覚によって評価される。特に味はおいしさの主たる要因である。味には五基本味以外にも辛味、渋味、えぐ味など科学的な味ではなく、痛覚などの体性感覚を刺激する味もある。さらに「なめらかな味」「粉っぽい味」など物性が味とリンクする例も少なくない。近年第6番目の味といわれているコク味も厚み、広がり、複雑さ、持続性といった言葉で表現されるように、物性と味とは密接な関係がある。現在までのところ、これらの味を評価する系としては官能評価があるのみである。本研究では、これらの複雑な“味”を評価する客観的な系を構築することを目的とした。特に、持続性に焦点を当てた研究を展開した。 味物質は舌上皮に結合し、唾液に溶けた状態となって味孔へと移動し、味覚受容体と相互作用し、味のシグナルが味神経を経由して脳へと伝達され、味として認知される。舌表面との相互作用が強い物質は舌上に長く残留し、徐々に唾液に溶けて味孔に達することから、味シグナルが持続すると考えられる。そこで、モデル味細胞膜として人工脂質二重膜を作製し、食品成分との相互作用を測定した。相互作用を測定する方法として表面プラズモン共鳴(SPR)を用いた。その結果、センサーグラムの形状などから、相互作用の強いグループ、弱いグループ、どちらにも分類されないものの3グループに分類された。相互作用の強いグループには、ギムネマ酸、モネリン、ミラクリンなど、味覚修飾活性を有するタンパク質や、エピガロカテキンガラート(EGCG)などが含まれた。
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