研究概要 |
本研究は,III型味蕾細胞に発現するグルタミン酸デカルボキシラーゼのアイソフォームであるGAD67が味覚情報伝達に関与し,その生成物であるγ-アミノ酪酸(GABA)の作用機構を明らかにし,さらに,GAD67活性を外部因子を導入することで制御することを目的とする.結果として,GAD67活性を改変すると塩味に効果を示し,外部因子は塩味改変物質として活用できると考えられる. 初年度は,GAD67タンパク質の高発現系の構築と精製方法の樹立を目指した.また,香辛料などの天然物から有効成分を抽出することで,GAD67活性に影響を与える物質の同定を行った. GAD67の発現系は,パン酵母,大腸菌を宿主とし,精製しやすいようにHis-tag融合型(C末もしくはN末)としてベクターを設計した.市販の高発現用ベクターや低温発現型ベクターを試した.その結果,大腸菌と産総研との共同開発した酵母での低温発現型のベクターを組み込んだ系が良好な結果を示したので,現在,精製を進めている. さらに,高度に精製した部分精製標品を用いて,香辛料抽出物との相互作用を検討した.その結果,GAD67活性を増幅する抽出物を幾種類か確認できた.それらは,味覚官能試験を行い,塩味増強効果の有無を検討した(2010年度日本農芸化学会大会にて発表,Hisakiら)また,高感度GABA測定をすべく,分析装置を購入し,その取扱いに習熟している段階である.今後,精力的に高感度分析をルーティンで行えるように学生のトレーニングを進める.
|