研究概要 |
本年度はジャガイモ(マッシュポテト)の飲み込みやすさについて検討を行った。ポテトフレークに3倍量の温水を加え、マッシュポテトを調製した。添加する副材料(10%)として水またはサラダ油を加えた試料を液体添加試料、固形脂であるマトメアップまたはショートニングを加えた試料を固形脂添加試料とした。測定はマッシュポテト試料と、被験者により各試料を咀嚼回数5,10,15回および自由咀嚼から得られた食塊試料について、テクスチャー特性、摩擦特性、唾液分泌率について行い、併せて顕微鏡観察により性状の相違を比較した。 テクスチャー特性の硬さは、固形脂添加試料よりも液体添加試料が有意に低値を示し、摩擦特性でも同様の傾向が得られた。唾液分泌率は、液体添加試料よりも固形脂添加試料の方が咀嚼回数の多い食塊試料で有意に高値を示した。食塊試料の硬さ、降伏応力および水平方向の抵抗力は液体添加の食塊試料が固形脂添加の食塊試料に比べて、有意に低値を示し、二極化の傾向を示した。 また、液体(油)添加試料は、咀嚼5回で、嚥下可能な食塊に近い状態になったが、固体脂添加試料では、10回以上の咀嚼が必要となった。そこで、食塊中の油脂の分散を顕微鏡で観察したところ、液体(油)添加の食塊試料では咀嚼5回以上でジャガイモ細胞間に細粒化された油滴がみられたのに対し、固体脂添加試料の食塊では咀嚼10回以上で水層(じゃがいも細胞層)と油脂層(固形脂層)に分離しているのが確認された。このことより、飲み込み特性が二極化する要因は、咀嚼過程における試料と唾液の混合のしやすさと食塊中に分散する油脂の状態であることが示唆された。 すなわち、液状油を混合させたマッシュポテトでは、液状油がジャガイモの細胞層の間に細粒化されて分散したことで、細胞間の抵抗力を低下させ、飲み込みやすい形態になったと結論できた。
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