当初は、活性分子の標的細胞(iNKT細胞)に及ぼす影響、並びにiNKT細胞の活性化に伴う炎症性細胞の活性化機構を検討することを主たる目的としていた。しかし、活性分子が極端に微量で、十分な量の活性分子を精製することが予想を遥かに上回る程困難であったことから、これらの実験を行うことが不可能となった。そのため、当該年度は米糠から抽出・精製した分子を出来る限り多く集め、構造解析を行うことを主たる目的として研究を行った。活性分子が極めて微量であったことから精製を何度も繰り返し、ようやく構造解析を行うだけの量の精製画分を得ることに成功した。その結果、面白いことに、これまで米糠に存在するスフィンゴ糖脂質は1種類だと考えられていたが、10種類以上のスフィンゴ糖脂質の存在すること、並びにこれまで米糠に存在していると考えられたスフィンゴ糖脂質にはiNKT細胞を活性化する能力は全くなく、他のスフィンゴ糖脂質(その他の分子)にその活性のあることが明らかとなった。このように、本研究によって、これまで不明であったiNKT細胞の新規ナチュラルリガンドが明らかとなった。これまでに食物中にiNKT細胞のナチュラルリガンドの存在しているという報告は全くないことから、本研究は世界で初めて食物中にiNKT細胞のナチュラルリガンドを発見したこととなり、かつ日本人が主食とする米に存在する米糠にこれまでに知られていなかった分子が存在し、それがiNKT細胞のナチュラルリガンドであることが明らかになったことから、学問的意義は非常に高いと確信する。
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