研究概要 |
2型糖尿病による末期腎症患者の生命予後改善のため、透析患者の食環境を評価した。まず、リン摂取量の季節変動を検討した。夏期に食物摂取頻度調査と加工食品頻度調査を実施し、昨年冬期のデータと比較した。血清リン濃度は夏期の方が0.4mg/dL低く、リン、カルシウム、カリウムの摂取量は夏期に有意に高かった。夏期の冷凍食品とインスタント食品加工食品からのリン摂取量は有意に低かった。蛋白摂取量には季節変動はなかったが、野菜には夏期と冬期で差が大きく、リン摂取量にも季節変動があった。 次に骨代謝マーカーとリン摂取量について解析した。骨形成マーカーとしてAlkaline phosphataseと骨型Alkaline phosphatase、骨吸収マーカーとして血清I型コラーゲン架橋N-テロペプチドと血清酒石酸抵抗性酸フォスファターゼを測定した。加工食品からのリン摂取量とリン代謝マーカー・骨代謝マーカー・骨質に関わる栄養素との相関がみられ、加工食品からのリン摂取量が透析患者の骨代謝・リン代謝に関連していることが示された。さらに新規の骨のバイオマーカーであるFGF23と栄養素摂取量、特に加工食品中のリンとの関連を明らかにするため、血中FGF23と血中klothoの測定をおこなった。全対象者のFGF23濃度は健常者の正常値(50 pg/ml)より高値を示した(中央値5,480 pg/ml)。FGF23濃度が高い群の血清リン濃度は低い群より有意差に高かった。血清カルシウム濃度、血清intact PTH濃度、血清1,25(OH)2D濃度、血清klotho濃度には有意な差はなかった。FGF23濃度が高い群と低い群のリンや総エネルギー、たんぱく質、カルシウムの摂取量には差はなかった。しかし、加工食品からのリン摂取量は高い群で優位に高かった。以上からリン摂取が骨代謝に影響することが明らかになった。
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