本研究目的は、2種類の老化促進モデルマウスをコントロール(CON)飼料、難消化性オリゴ糖(FOS)飼料ならびに食物繊維(GM)飼料を用いて長期間飼育し、先天的に保有する疾病の発症がどのような要因によって抑制されるかをNutrigenomicsの観点から解明することである。給餌飼料の違いは各腸内細菌種の消長となって現れ、結果として代謝活動に変化が生まれ、それによって腸内細菌代謝産物の質的量的変化が生じて宿主の生存が影響される。このため、FOSやGM摂取による腸内フローラの変化と腸内細菌を介した宿主の生命活動とその要因との関係を明らかにするために酸化ストレス、免疫機能、骨代謝などに関する生体指標の変動などを観察している。平成22年度には、老年性骨粗鬆症発症マウスSAMP6および記憶障害・行動異常マウスSAMP8をそれぞれ45匹(計90匹)をCON飼料、FOF飼料ならびにGM飼料を用いて各群15匹ずつに分けて32週間飼育し、各生体指標に及ぼす影響を観察した。SAMP6については、FOSおよびGMのいずれによっても腸内フローラが変化してCa代謝が改善した。特に、FOS群ではBifidobacterium属の占有率が高くなってβ-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼ活性が低下した。GM群ではClostridium属が増加してこれらの有害酵素活性は増加した。しかし、FOS群とGM群ではCa代謝に関係するRANKLやI CTPなどに及ぼす影響に差異があることからその作用機序が異なること示唆された。SAMP8については、尿および血液の酸化ストレスマーカーであるBAP test、d-ROMs test、8-OH d Gおよびlsopratanを測定し、FOS群およびGM群は対照群に比べて抗酸化作用が向上していることが観察された。また、パッシブアボイダンスを用いて行動観察しているが、現在の測定条件では群間に差異は観察されていない。
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