研究課題/領域番号 |
22300263
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研究機関 | 長崎県立大学 |
研究代表者 |
奥 恒行 長崎県立大学, 看護栄養学部, 教授 (50010096)
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研究分担者 |
中村 禎子 長崎県立大学, 看護栄養学部, 助教 (60382438)
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キーワード | 老化促進マウス / 難消化性オリゴ糖 / 食物繊維 / 腸内フローラ / SAMPマウス / 骨代謝 / 記憶・行動異常 |
研究概要 |
本研究目的は、2種類の老化促進モデルマウスをコントロール(CON)飼料、難消化性オリゴ糖(FOS)飼料ならびに食物繊維(GM)飼料を用いて長期間飼育し、先天的に保有する疾病の発症がどのような要因によって抑制されるかをNutrigenomicsの観点から解明することである。給餌飼料の違いは各腸内細菌種の消長となって現れ、結果として代謝活動に変化が生まれ、それによって腸内細菌代謝産物の質的量的変化が生じて宿主の生存が影響される。このため、FOSやGM摂取による腸内フローラの変化と腸内細菌を介した宿主の生命活動とその要因との関係を明らかにするために酸化ストレス、免疫機能、骨代謝などに関する生体指標の変動などを観察した。平成22、23年度には、老年性骨粗鬆症発症マウスSAMP6および記憶・行動異常マウスSAMP8をそれぞれ45匹(計90匹)をCON飼料、FOF飼料ならびにGM飼料を用いて各群15匹ずつに分けて32または43週間飼育し、各生体指標に及ぼす影響を観察した。SAMP6については、FOS群およびGM群のいずれも腸内フローラが良好になりCa代謝が改善した。特に、FOS群ではBifido-bacterium属の占有率が高くなってβ-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼ活性が低下した。GM群ではClostridium属が増加してこれらの有害酵素活性は増加した。しかし、FOS群とGM群ではCa代謝に関係するRANKLやI CTPなどに及ぼす影響に差異があることからその作用機序が異なることが示唆された。SAMP8については、パッシブアボイダンスを用いて記憶・行動異常と腸内フローラと尿および血液の酸化ストレスマーカーであるBAP test、d-ROMs test、8-OH d GおよびIsopratanとの関係を観察した。FOS群およびGM群は対照群に比べて腸内フローラが改善されて脳老化が抑制され、また抗酸化作用が向上していることが観察された。さらに、血液の炎症性サイトカインが抑制されていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画したスケジュールで2種類の老化促進マウスSAMP6およびSAMP8を難消化性オリゴ糖または食物繊維含有飼料で33周間または43週間飼育し、各マウスの腸内フローラの変化を観察すると共に、菌体酵素活性を測定した。SAMP6についてはCa出納、骨組成、デオキシピリジノリン、RANKLやI CTPなどの骨代謝関連の各種生体指標を測定した。骨組織の画像解析も実施した。S酬P8については、パッシブアボイダンスを用いて記憶・行動異常と腸内フローラと尿および血液の酸化ストレスマーカーであるBAP test、d-ROMs test、8-OH d GおよびIsopratanを測定した。さらに、血液の各種サイトカインも合わせて測定した。これらの測定した生体指標は当初予定した以上の内容である。反省すべき点を挙げると、各老化ステージをもっと細かく分けて実験を実施すれば、さらに腸内フローラの変化と老化との関連性が明らかになるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成22年度および23年度において、当初計画した実験はすべて実施した。その研究成果は関係の学会の年次大会においてすでに発表した。現在、その研究成果を3~4報の学術論文にすべく作業を精力的に進めている。また、これまでの研究において、SAMP8の記憶・行動障害は、脳機能の老化と関係があるのではないかと考えて追加実験を計画中である。新たにSAMP8を難消化性オリゴ糖含有飼料で長期間飼育して、老化ステージを3~4つに分けて各ステージにおける脳機能に関係する生体指標を測定し、腸内フローラの変化と記憶・行動障害との関連性を検討する予定である。また、難消化性オリゴ糖を摂取したときに腸内細菌が産生する水素ガスが抗酸化作用を示す可能性が示唆されているので、水素ガスが脳機能と関連している可能性が考えられる。これについても実験を実施したいと考えている。
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