研究概要 |
各国の科学アカデミーが近代史において名誉職機関と化していったのにたいし,ロシア/ソ連邦/ロシア科学アカデミーは現在にいたるまで,傘下に多くの学術研究機関を集めることで,一国の研究活動全般の展開に圧倒的な影響力を発揮する特有の組織となった.この科学アカデミーの近現代ロシア史上における役割,組織,社会的・政治的なありようを分析することは科学社会学・科学技術史の重要な研究課題である. 研究にあたっては,現地で収集した文書記録類(公文書,ドキュメント等),および文献(書籍,論文,その他)を資料として,それらを読むことを通じて史実を再構成する,いわゆる文献実証の方法を採用する.このため,研究代表者の市川,研究分担者の梶,研究協力者の藤岡毅(同志社大学・嘱託講師),金山浩司(日本学術振興会・特別研究員PD),齋藤宏文(東京工業大学・教育工学開発センター・特任助教),隠岐さや香(広島大学・大学院総合科学研究科・准教授)をモスクワやサンクト=ペテルブルク,あるいはパリに派遣し,それぞれ当地の科学アカデミー文書館などで資料調査に従事せしめた.研究分担者=小林は国内で飼料調査に従事した. また,本研究の実施にはロシア科学アカデミー・S.I.ヴァヴィロフ名称自然科学史=技術史研究所の協力が欠かせないが,9月には同研究所サンクト=ペテルブルク支部と,11月に同研究所本体と協力協定を締結した.同研究所サンクト=ペテルブルク支部から2011年2月,主任研究員のガリーナ・イヴァノヴナ・スマーギナ女史を招き,東京で公開セミナーを開催した. さらに,年度末には,1年間にわたる研究成果(の一部)を取りまとめ,本研究独自の論集として刊行した(『"科学の参謀本部"-ロシア/ソ連邦/ロシア科学アカデミーの総合的研究-(平成22~24年度日本学術振興会科学研究費補助金[基盤研究(B)]研究成果中間報告)』Vol.1).同論集には,研究協力協定に基づき,数名のロシア人研究者からも寄稿していただいた.
|