研究課題/領域番号 |
22300305
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松井 敏也 筑波大学, 芸術系, 准教授 (60306074)
|
研究分担者 |
原 光二郎 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (10325938)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 炭酸カルシウム / 微生物 / 微細構造 / 漆喰 |
研究概要 |
漆喰などに着生する地衣類において、基物への影響を考慮した記録観察方法を確立した。 着生地衣類により漆喰中のカルシウムが溶解していることを界面部分のラインプロファイル分析から明らかにした。地衣の着生によって漆喰のカルシウム分が溶解した可能性が考えられ、地衣から代謝されるシュウ酸カルシウムの生成の有無によって化学的劣化の機構が異なる可能性が示唆された。基物のカルシウムがシュウ酸カルシウムのカチオンの由来の一つである可能性が考えられた。 遺跡の微生物の分類・同定のため、これまでのrRNA 遺伝子のITS領域に加え、新たに26/28S rRNA 遺伝子のD1/D2(可変領域)を用いて解析を行った。プレループ遺跡北東の塔付近で採集した漆喰上の黒色微生物は、モジカビ科(Hysteriaceae)の菌類(最大配列同一性:89%)とクロレラ科(Chlorellaceae)に属する単細胞藻類(85%)からなる集合体であることが分かった。一般的にモジカビ科菌類は腐生菌として知られており、また、光学顕微鏡下では明確な地衣類構造は認められなかったが、地衣類である可能性も否定できないと考える。また複数の場所でクロレラ科の同じ藻類が見つかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
漆喰上に生育する地衣類の特性がDNA解析などによる種の同定により把握できるようになった。暴露試験を行なっている試供体に微生物の着生が認められ、着生初期のメカニズムの解析が期待できるとともに、経年による劣化が顕著な歴史的材料に着生する微生物との比較調査が可能になるなど、準備状況が整った。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでの研究調査項目を継続し、漆喰に着生した微生物の界面構造解析とDNA解析を実施する。またこれまでに観察した微生物の経過調査を実施し、25年度に迎える最終年度での総括に資するデータをまとめる。
|