研究課題
今年度においては,「全国地質Sr同位体比マッピング」のための以下の基礎・応用研究を行いながら,研究全体の総括を行った。(1)河川堆積物のSr同位体比が流域母岩のSr同位体比を反映することの確認: ①花崗岩のみの単一地質, ②安山岩・堆積岩・花崗岩等の複雑地質,③石灰岩地質,の異なる3地質流域において,河川堆積物のSr同位体比が流域母岩のSr同位体比を反映しているかどうかを,流域母岩のSr同位体比,母岩の物理的・化学的風化による元素組成・鉱物組成の変化を抑えつつ詳細に調べた。その結果, 180μmの粒径分画のSr同位体比が,石灰岩流域地質の場合を除いてSr同位体比の代表値として適切であることを明らかにした。①②は国際誌に投稿し,③は追加の分析を行って,論文にまとめた。(2)河川堆積物のSr同位体比と動植物のSr同位体比の関係の解明: 実際に農作物の産地判別や,人の移住の情報をSr同位体比を用いて行うためには,河川堆積物のSr同位体比と動植物のSr同位体比の関係を明らかにしておく必要がある。そこで,イネを対象例とし,土壌あるいは河川堆積物中のSrが動植物にどのように取り込まれているかを調べた。その結果,酢酸アンモニア溶液で抽出される交換性Sr成分のSr同位体比が,動植物のSr同位体比に反映されることが明らかになった。以上をまとめて国際誌に論文を投稿した。(3)全国版地質Sr同位体比マップの公表: 全国版地質Sr同位体比マップを完成させ,ArcGISによる流域地質解析に基づいて河川堆積物のSr同位体比の詳細な解析を行った。この全国版地質Sr同位体比マップは,近日中に公表予定である。(4)砕屑物中のSr同位体比を用いた物質輸送の研究: 本研究において,河川堆積物のSr同位体比は,流域地質をよく反映しており,物質輸送の指標として有効であることが改めて明らかになった。このSr同位体指標を用いて,国内外のいくつかの地域で実際に応用研究を行った。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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名古屋大学加速器質量分析計業績報告書
巻: 16 ページ: 114-119
巻: 16 ページ: 156-161
Progress in Oceanography
巻: 16 ページ: 155-167
doi.org/10.1016/j.pocean.2014.04.015