研究課題
破壊的な試料作成が許されない文化財サンプルに関しては、切片を作成する事ができないので、X線トモグラフィーなどの非破壊的な手法が期待されてきた。「木材から切片を作って顕微鏡を覗く」代わりに、「X線を使って透過像を撮影し、それをもとに無限に切片を作ることのできるバーチャルな木材組織を3Dで作製する」という訳である。 一般に医療用のシステムでは数百μm ~ 1mm程度の分解能 に留まるが、大型放射光施設SPring-8では、限りなく強く、そして平行に発せられるX線を利用することができる結果、0.5μmの分解能が保証される。ここまで見えると樹種同定に適したスケールで構造を調べることができ、美術院の担当する国宝木彫像の調査などに多大な貢献をした。一方、解剖学的な特徴には、DNAのような生命の根源物質に刻まれる遺伝的、系統的変異が正確に現れる訳ではないので自ずと限界がある。解剖学者の努力によって、限界は属のレベルであり、種の特定ができる樹種は限られていることが知られている。しかし、文化史や歴史上重要な史実の根拠として、種の判別が切望されるケースも少なくなく、その意味で形態に寄らない新しい手法の開発が有用と考えた。まず、携帯型の質量分析装置を用いた揮発性有機化合物(VOC)を用いてヒノキ科有用樹種の差別化が可能であることを見いだし、その分析手法やデータの解析方法について明らかにした。また、赤外線、近赤外線、ラマン分光などのスペクトルを精査し、近赤外法が簡便で再現性のよい結果を与えることを見いだした。このように、解剖学的な特定が困難な樹種間の識別のための新しい方法論を提案することができた。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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滋賀県立安土城考古博物館紀要
巻: 21 ページ: 71-94
Polymer Degradation and Stability
巻: 98 ページ: 2351-2356
国宝・重要文化財知恩院本堂および集会堂ほか二棟修理工事報告書(集会堂編)
巻: 1/2 ページ: 105-108