樹種を識別することは、考古学や歴史学など様々な局面で有用な情報となる。そのために、光学顕微鏡観察により形態的な特徴を見極めて識別する手法が発達してきており、このような方法で現在属レベルでの識別が可能となっている。単純な作業であるが、経験と熟練を要する技術であり、また国宝をはじめとする文化財の場合は非破壊が原則であるため、資料を作成することすら不可能である。このような状況を鑑み、光学顕微鏡による従来法とは別の新しい非破壊樹種識別法として、大型放射光X線CT法、 揮発性微量物質、近赤外分光分析法による樹種識別について検討し、実際の国宝サンプルの観察と同時に樹種識別の可能性と問題点を明らかにした。
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