研究概要 |
約50Maから始まったインド大陸とユーラシア大陸との衝突に伴って、ヒマラヤ-チベット山塊は成長を始め,20-30Maにほぼ現在と同じ高さに達したと考えられる.これ以降ヒマラヤ-チベット山塊の上方への成長は頭打ちとなり,かわって側方への成長が始まった.この側方拡大を現在最も生々しく観察できるのは、チベット高原の北東縁部である. ALOS衛星の立体視画像を用いてチベット高原北東縁の変動地形を捜索した結果,Kumkuli盆地に波長40kmに及ぶ大規模な活褶曲(複背斜構造)が存在することが分かった.この複背斜構造の西部発達する時代を異にする数段の扇状地群は,過去十数万年間の変形を記録している.ALOS画像の立体視によってこれら扇状地面群の地形分類を行ったのち,SRTMDEMを用いてそれらの変動量を計測した.Penultimate Glacialに形成されたと推定される扇状地面の垂直変位量は最大285mであることから,この複背斜構造の隆起速度は、最大約2.0mm/yrと推定される.本地域の活褶曲は波長が40kmに及ぶ大規模な構造であるから,その成因は地殻深部まで及ぶ断層運動ないし、地殻深部における流動変形による可能性がある. 今年度はまた,中国側共同研究者である何宏林・付碧宏の2氏を招いて、東京において研究集会を開催した.本研究に関わる既存研究のレビューを行いそれらの問題点を明確にした後。本研究目的を達成するための方法と研究計画について議論を行った.また、次年度に実施する野外調査について実行計画を検討した.
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